「お金とか、名誉とか、モノというものは他人にとられてしまうことがあるよね。
だからね、心の中に、自分が本当に◯◯、◯◯◯と言えるようなものを見つけるんだよ。」
デスクです。世界新聞ではネパール地震を受け、「ネパールのことをもっと知ってもらおう」という趣旨で、旅するライターによるネパールにまつわる記事を掲載しています。
先日、強い想いは国を越える…。ネパールの「日本寺」が起こしつづける奇跡の話という記事を書きました。今日はその日本寺でのもうひとつのエピソードを書きたいと思います。少し個人的な話にはなりますが、どうも心が晴れない、これから何か決断しようとしている、といったような人に是非シェアしたい話です。
日本山妙法寺(通称・日本寺)は、ネパールの仏教の聖地・ルンビニで「世界平和」のために活動を続けるお寺です。日本寺がどんな活動を行っていて、どんなことが起こりつつあるのかということは記事を参照してください。
4年前、世界一周中だった僕は、「修業体験」ができると聞いてここを訪れました。そこで出会ったのが、他の僧侶に「お上人さん(高僧の意)」と呼ばれる一人の僧侶です。
生活を共にしてみると、日本寺の方々は信じられないくらい慎ましい生活をしていました。
朝4:30から始まるお祈りから始まり、村巡り(太鼓を叩きながら村を歩く)、夜のお祈り、そして20時頃には就寝。肉は食べない、お酒も飲まない、食事は三食野菜のぶっかけご飯(下写真)。極めつけが、食べ終えた皿に水を入れて、指でよごれをこすり、それを飲む(洗う時の水の節約になる)…。
そんな生活を目の当たりにして、「え?お坊さんってそもそも、こういう生活をするものだっけ?」と頭がひたすら混乱したのを覚えています。
質素な味付けですが、お祈り後はとても美味しく感じました
食事を摂る前に読む「食法」というお経
旅中、食べたいだけ食べる不摂生な生活を送っていた僕にとって、それはしんどい3日間でした。1日目で「帰ろう」と思いましたが、僕を引き留めたのがお上人さんの存在でした。
普段は寡黙なお上人さんですが、食事の後、「少し話そうね」と言って話し始めることがありました。それは、すごく不思議な時間でした。
お上人さんのすごさに気づき始めていた僕は、毎回、いくつか質問を用意して食事のテーブルにつきました。
しかし、僕が質問することはついにありませんでした。何故なら、お上人さんが皆に向かって話している内容がそのまま、僕の質問の答えになっていたからです。信じられないかもしれませんが、お上人さんの話がそれだけ普遍的だったのだと僕は解釈しています。
村巡りで先頭に立つお上人さん。お上人さんはこれまでアフリカで妙法寺(世界二十箇所くらいにある)を開拓してきた
天上人のようなオーラを持つお上人さんにはじめて、「人間らしさ」を感じた瞬間がありました。ある晩、皿の水をすすりながらお上人さんは言いました。
「私たちはね、貧乏な生活をしてるでしょ。でもね、全然つらくないの」
「夢があるからね」
「夢」という言葉を聞いて、思わずドキっとしました。目の前の80歳を超えるであろう老人から「夢」という言葉が発せられたことが意外だったんだと思います。
「僕の夢はね、世界平和です」
夢が世界平和なんて、聞いたことないです。夢というのはたいてい、もっと個人的なものですよね?でも、お上人さんの目は子どものようにキラキラしていました。
続けてお上人さんは言いました。今でも僕の人生の「ものさし」になっている言葉です。
「お金とか、名誉とか、モノというものは他人に取られてしまうことがあるよね。
だからね、心の中に、自分が本当に好き、楽しいと言えるようなものを見つけるんだよ。
あなたが心の中に見つけたものはあなただけのものだからね」
昨日今日会った僕に、どうしてこんなに温かい言葉がかけられるのでしょう。
僕は当時、自分が好きだった仕事に見切りをつけて旅をしていました。しかし、この言葉を聞いて原点回帰できたことは、旅の一番の収穫だったと思っています。言ってみれば僕が今、この世界新聞を運営しているのは、お上人さんの言葉があったからです。
村巡りで子どもと触れ合うお上人さん
だいぶ個人的な話になってしまいましたが、そんな訳で僕にとってネパールは忘れられない国です。他の旅するライターの記事を読んでも、ネパールというのは何か、特別なものを持った国だと感じずにはいられません。
ネパールに支援をお願いします。
まずネパール国内に備蓄している物資を使い、仮設避難所に集まっている人々のための給水タンク、経口補水塩、亜鉛の錠剤、救護施設用のテントなどを提供しています。
本募金では皆さまの寄付額と同額を、Yahoo! JAPANからも寄付させていただきます。
みなさまの善意が2倍になる仕組みです。
ネパール赤十字社と国際赤十字・赤新月社連盟が実施する救援活動を支援するため、日本赤十字社は下記のとおり救援金(救援金名称「2015年ネパール地震救援金」)を受け付けます。
世界新聞では「think of NEPAL」と題してネパールのことを知ってもらう記事を掲載しています。
・強い想いは国を越える…。ネパールの「日本寺」が起こしつづける奇跡の話
・「いつか日本へ…」。ホテルの玄関に泊まりながら勉強し、夢を叶えたネパール人の話
・震災前にカトマンズで出会った人々の安否と、彼らのこれからを想う
・ネパール地震で亡くなったもうひとつの命。山で売買される「シェルパ」を知ってますか?
・ネパールと日本は「遠い国」なのか? 4年前、カトマンズで食べた「醤油ラーメン」の話
・過酷な環境で美しく生きる人々がいる。震災前に出会った6人のネパール人を想う
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