前回までのあらすじ:アルゼンチンでクレジットカードの残高が4万円になったデスクは、シティバンクの「エマージェンシーキャッシュ」を発動!思いがけない両替トラブルに見舞われるも一件落着。ドイツ行きの飛行機に乗り込んだのでしたが…。
全4回でデスクの世界一周での「最悪のエピソード」を綴るシリーズの最終回。金欠からはじまったピンチがまさか、国際問題にまで発展することになろうとは…。
第一回 世界最南端の街でそれどころじゃなかった話
第ニ回 「エマージェンシーキャッシュ」を発動した話
第三回 札束を抱えてブエノスアイレスを奔走した話
第四回 ビザ無しで入国しようとするとこうなる
TOMOKOさんのご厚意で10万円分のペソをドルに換えてもらった僕は翌日、意気揚々とブエノスアイレス→フランクフルト(ドイツ)の飛行機に乗り込みました。
1つ目の経由地ブラジル・サンパウロに到着。GOL航空の陽気なお兄さんに見送られて、ターミナルでさくっとトランジットの手続きを済ませようと思ったんですが…
どうもおかしいんです。
どこにもトランジットへの通路がないのです。どうあがいてもイミグレ(入国管理)の方にしか行けないようになっているんです。袋小路ってやつです。
もちろん僕はトランジットだから入国の必要はありません。しかし、僕のチケットを見た係員はみんな口を揃えて「イミグレに行け」と…。
でも、行っても仕方ないんです。僕はブラジルのビザを持っていませんから。
「おかしいハポネス(日本人)がイミグレで騒いでいる」とでも伝わったのでしょうか。警察官らしき人が飛んできて、面白いことを言い出しました。
「トランジットだけど、一度入国しないとダメだよ。でもあなたはビザがないから入国できない」
「アルゼンチンに戻ることになると思う」
僕はそれをタチの悪いブラジリアンジョークだと笑い飛ばしました。
入国するにしても、トランジットでビザが必要な訳がない。
しかし、それから入れ替わり立ち替わりいろんな人が僕のもとにやってきました。皆言うことは同じで以下の3点でした。
「入国しないといけない」「ビザが必要」「アルゼンチンへ戻る」
まじで帰らなあかんの……?
思えば、少し変わったチケットだったのです。
僕が購入したチケットはコンドル航空のもので、ブエノスアイレス(アルゼンチン)→サンパウロ(ブラジル)→サルバドール(ブラジル)→フランクフルト(ドイツ)という2回トランジットがある便でした。サンパウロ→サルバドール間はブラジル内のフライトになるので、違和感は感じていたのですが、約8万5千円という激安プライスがそれを上回りました。また、コンドル航空の南米→フランクフルトと言えば、旅人がよく使う便だったので大丈夫だろうと。
青くなっていると、ブエノス→サンパウロで利用したGOL航空のお兄さんがやってきて言いました。
「一度入国しないといけない」「ビザが必要」「アルゼンチンへ戻る」。
もはやお決まりとなったセリフを述べた後、お兄さんは神妙な表情になりました。
「これは我々のミスでもある。ビザがないあなたを出国させてしまったのだから」。
この一言で、本当なんだ。帰るんだ。と思いました。
険しい表情でトランシーバーでどこかに連絡するお兄さん。「ハポネス」とか「ノ―ビザ」とか言っていました
お兄さんに連れられて搭乗ゲートへ。
「ここからブエノス行きの便が出るから座って待っておけ」
しばらくすると、GOLのスタッフがやってきて一枚の紙切れを僕に渡しました。強制送還は15:15の便になったようです。
これですね。
気がつけば、GOLの人がしっかりぼくを監視していました。
僕はGOLの人に気になっていたことを尋ねました。
「チケットはタダですよね?」
「もちろんだ」
GOLの人はニヤリと笑って言いました。
そして、3時間後、僕はブエノスに帰ってきました。
空港を出ると辺りはもう暗闇。南米には似つかわしくないひんやりとした風が吹き抜けていきました。
こうして強制送還された僕はショックのあまり、ブエノスのホステル(写真)に引きこもることになりました。もちろんチケットの代金は帰ってきませんでした。
そして5日後、「このままじゃアルゼンチンに住むことになる」と直感した僕は、ヨーロッパ行きのチケットを買い直し、南米脱出に成功したのでした。
もちろん、直行便を選びましたよ。
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