ギリシャに難民が集りすぎてニューヨークのようだったという話

2016.03.30 11:00 
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NYといえば様々な人種が集まり「人種のるつぼ」と言われますが、今、ギリシャに世界中から人が集っているのをご存知でしょうか。ギリシャで難民問題の新たな一面を目撃しました。

 

アッサラームアライクム(アラビア語の挨拶。「あなたの上に平穏を」の意味)!

「シリア難民の今」を巡って旅をする旅ライターのへむりです。

 

シリア難民の人たちから話を聞きながら、ヨルダン・イラク・トルコと旅してきて、たどり着いたのはギリシャです。

 

ギリシャの難民はシリアからだけじゃない

当初、全く予定をしていなかったのですが、「ヨーロッパを目指す難民」の人たちが、ヨーロッパへの足がかりに向かうのがトルコ〜ギリシャの海越えルートであり、訪れることにしました。

ボートの転覆によって亡くなった子どもの遺体が沿岸に流れ着いたことは世界中を驚かせましたが、今もなお多くの難民がトルコからギリシャに危険な密航で向かっており、UNHCRによると、今年だけでも7万人を越えているようです。

 

ところで「難民」と聞くと、多くの人は「シリア難民」をイメージされるのではないでしょうか?

実際、ヨルダン・イラク・トルコで出逢った難民の多くは、シリアから来た人たちでした。

 

ですが、僕がギリシャで出逢った難民は非常に多国籍。アフガニスタン、パキスタン、アルジェリア、エジプト、そして僕は直接会っていませんが、それ以外にイエメン、リビア、チュニジアからも来ているそうです。

 

ぼくがアテネの公園で出会った人々

ギリシャの首都アテネのビクトリア広場に行くと、公園内は大きな荷物を持った家族連れが座り込んだり、立ち話をしていました。

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僕もベンチに座って、隣にいる人に声をかけてみるとパキスタン人。今日の朝辿り着いたところで、国境に行くタイミングを模索しているそうです。

 

アジア人のような顔をしている人がいたので、話しかけてみると、彼らはアフガニスタン人。

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昨日の朝にこの公園に着いて、今まさにマケドニア行きのバスに乗り込む直前でした。

マケドニアからセルビアなどの旧ユーゴ圏を抜けて、ドイツやスウェーデンを目指すのだそうです。

「俺たちは今から行くから、ドイツで会えたらいいな!」と、僕を難民だと思っていたらしい彼らは出発していきました。

 

多国籍な人たちが集まることを物語る公園近くのお店の看板。

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エジプト人にも出会いました。

「エジプトでは仕事がないんだよ」と、経済的な理由で難民という道を選んだそうです。

 

とはいえ、「難民」の定義は

 

「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々
UNHCRより

 

なので、こうした経済的な理由で本国を逃れた人たちのことは、条約的には「難民」には当たらないのです。

 

ビクトリア広場の近くには、難民の人たちが無料で入れる施設もありました。子ども連れが優先的に入れるそうで、主にヨーロッパからたくさんのボランティアが集まってきています。

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難民が経由するレスボス島へ

そうした難民と支援するボランティアが特に集まっているのが「レスボス島」というトルコから20kmほどの距離にあるエーゲ海の島です。

 

うっすら見える海岸線はトルコ。まさにこの海を命がけで渡ってきているのです。

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フェリーでレスボス島に入ると、アラビア語で書かれたアテネ行きフェリーとマケドニア行きのバスの広告が目に付きます。

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NYと化すレスボス島

島内には、政府が管理するキャンプと、非公式なキャンプが幾つかあります。

 

公式なキャンプでは、国際的なNGOスタッフが働いており、難民として登録する施設や、保健センター、無料の飲食物配布などがあります。

所狭しとたくさんの人たちがいて、4ヶ月住んでいたアルジェリア人いわく15人が一つのプレハブの家に住んだり、夜は寒かったりと、「住環境としては良くない」そうです。

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ただ、島にいる人たちの多くは数日でマケドニア経由で、ドイツ・オランダ・スウェーデンに向けて出発するとのことでした。

 

非公式キャンプは、公式キャンプのすぐ隣やフェリー乗り場のすぐ近くにありました。

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そこにはヨーロッパからのボランティアが自腹でやってきています。

特に多かったのは、ドイツとスウェーデンからの若者で、難民がたくさん自国にやってきていることから「他人事じゃない」と、レスボス島までやってきたのだそうです。

学生さんたちや、キャンピングカーで世界一周中にやってきたカップル、12日間の仕事休みを取ってきた女性など様々な若者が、料理を振る舞い、子ども達と遊び、寄付された服を配ったりしているのですが、彼ら自身も楽しみながらやっていることが伝わってきます。

難民も、ボランティアも多国籍で、まるでニューヨークのようです。

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レスボス島の元役場の職員のおじさんは島の現状をこう語りました。

 

「もともとは観光客を集める必要のない自給自足の静かな島だったんだ。しかし、今はたくさんの国籍の人たちが集まって、まるでニューヨークみたいな人種のるつぼになっているんだよ」

 

シリアの難民問題をきっかけにやってきたギリシャでしたが、シリア以外にも様々な理由で「自国に住むことができない」という人たちがたくさんいることを知りました。

 


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へむり
生まれも育ちも大阪人なのに、よく関空で止められる。留学でイギリスに、NGOでフィリピンに、青年海外協力隊としてシリアに、と訪れていくうちに、日本の「普通」に馴染めなくなっているのに、なぜかキャリアセミナーの講師を各地でしている。2015年夏より、協力隊でガーナに行った彼女に会いに行き、そのままアフリカと中東を周る旅へ。 サイト:idea journey〜 世界の「生き方」「働き方」を伝える旅

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