初中国旅行で訪れたハルピンで、わたしが731部隊の施設跡に行くことを知ると、彼らは口々に反対したのでした。
みなさん、こんにちは!ただいまカップルで世界一周中の水島早苗です。
抗日戦争勝利70周年のニュースを見て思うこと
少し前まで、中国の抗日戦争勝利70周年の行事のニュースがよく流れていましたね。
実は1週間ほど前まで私たちは中国・雲南省を旅していました。その時に抗日戦争勝利を祝う横断幕を多く目にし、中には「日本人と犬は入店お断り」と書かれたものまでありました。これまでの旅で日本人という理由で窮屈な思いをしたことがなかっただけに、ショックでした。
しかし、中国人がみんな日本人を嫌いだったり、憎んでいるわけではありません。そのことを皆さんに共有したくて、今回は2年前に行った初中国一人旅のことを報告したいと思います。
私の初めての中国はハルピンでした。ハルピンはこのあたりです。冬には最低気温がマイナス40度までになることもあるそうで、氷祭りが催されています。
悲惨な歴史を見に行く
ハルピンには日本によって731部隊という研究施設が作られ、そこで悲惨な歴史があったとされています。
731部隊は第二次世界大戦期の大日本帝国陸軍に存在した研究機関のひとつ。細菌戦に使用する生物兵器の研究・開発期間でもあった。そのために人体実験や生物兵器の実戦的使用を行っていたとされている。人体実験の対象となったのは朝鮮人・中国人・モンゴル人・ソ連人・アメリカ人の捕虜、中国やソ連・モンゴルの一般市民、女性、子どもが多数含まれていた。(wikipediaより引用)
731部隊のことは学校でわずかに習った記憶があります。しかし、自分たちのこととして受け入れることができませんでした。「日本人がそんなことをするわけがない」とさえ思っていたのが本音です。だから、ちゃんと自分の目で見て確かめようと思い、ハルピンに行くことにしました。
「日本人ですよね!?」
ホステルに到着すると、ロビーには中国の各都市から来た若者が集まっていました。
私がチェックインをすませると…
「すみません!日本人ですよね?!」と話しかけられました。彼の名前は展君。独学で日本語を勉強していて、AKBの大ファンだそうです(前田敦子のTシャツを着用)!
二人で話していると、日本語を勉強している中国人の女の子たちや日本人旅行客が集まって、気づけば大所帯になりなっていました。
夜遅くまでハルピンの名所のこと、評判のお店、そして日本や中国のことを話して過ごしました。
左は日本人旅行者、右が上海から来たAKBファンの展君
「行かないで!」
ハルピンでの予定を尋ねられたので、731部隊の研究施設跡を見に行くことを話しました。すると…彼らは口々に、
「行かなくていいよ!」「きゃー!行かないでー!」
と反対。私にとっては意外な反応でした。
彼らが反対したのは、せっかくハルピンに来たんだから楽しい思い出を作ってほしい、仲良くなったのに気まずくなるのは嫌だ、という理由でした。
それでも私は旅の目的を果たすために、彼らの反対を押し切って翌朝出発しました。
通りすがりの男性
ガイドブックに書かれている通りにバスに乗りましたが、着いた先はこんな景色。施設はかなり大きいはずだから、迷うことはないだろうと踏んでいたのですが、どこにも見当たりません。
道を尋ねることにして、通りすがりの男性に漢字で書いたメモを見せると、説明してくれましたが、言っていることがわかりません。戸惑っていると、仕方がないなぁと言う風な顔をして、ついておいで、と身振りで教えてくれました。
こんなに遠くだとは思わなかったので、連れてきてくれた男性に丁寧にお礼を言いたかったのですが、男性はさっと向きを変えて歩いて行きました。
男性の背中にお礼を言ったあと、見えなくなるまで見送ろうと思いました。すると、男性も歩きながら時々振り返っては手を振ってくれました…。
耐えられない内容
研究施設跡の展示は想像以上に見るのはつらい内容でした。ここに勤めていた日本人の証言のビデオ展示があり、日本語で涙ながらに話すのは聞くに耐えない内容でした。証言は20〜30分に及び、全部聞いたあと、しばらく放心状態でした。戦争は人を悪魔に変えてしまうというのはこのことだと思いました。
元隊員が戦後にここを訪問し記したものが展示されていました。
(50年近い年月の間 胸に抱き続けていた謝罪と悔恨の思いを今日表すことが出来た
元隊員であることの身分を明らかにしての訪問は あまりにも心の重いことであったが
私は私なりにひとつの区切りをつけたかった 合掌)
中国側からの展示だけでなく、このように日本側からの展示もあったので、より胸を締め付けられました。やっぱりほんとだったんだ・・・。
展示を直視することができた理由
その帰りに中国の若者から教えてもらった評判のお店でアイスを買って食べて、
中国らしい美しいものを見て、観光を楽しみました。
初めての中国でしたが、見学の前にホステルや道に迷った時に中国人の優しさに触れていたからこそ、しっかり展示を見ることが出来たんだと思います。ハルピンの名所や評判の店を彼らが教えてくれていなかったら、重い気持ちだけがハルピンの思い出になっていたんじゃないでしょうか。
今回の旅でも中国からの旅行者に会いますが、多くの人は我々日本人に対して好意的です。ここでの経験があったからこそ、個人と個人のつながりをもっと大事にしたいと思うようになったのでした。
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