香港と言えばかつてはイギリスの租借地であり、中国に返還された今でも特別行政区として異国情緒を感じさせる観光客にも人気の華やかな都市ですが、そんな香港に似つかわしくない珍スポットが万仏寺です。
こんにちは!植竹智裕(うえたけともひろ)です。
香港といえば、超高層ビルが立ち並び「100万ドルの夜景」で有名な香港島や、中国式の街並みが残る九龍地区が観光の中心地となっていますが、九龍から40分の場所に、1万もの仏像が並ぶ寺があるというので行ってみました。
万仏寺はここ
住所:Tai Po Rd Sha Tin, 香港
香港のベッドタウンとして再開発が進む北部の新界地区。最寄りである沙田の駅前は緑にあふれ、早くも超高層ビルが並ぶ中心部とのギャップをひしひしと感じます。
ここから目指す万仏寺までは徒歩で約15分。再開発とは無縁そうな古くからある住宅街の隙間を抜けて行きます。
何となく意味が伝わる漢字の看板。
路地に目を凝らすと……
萬佛寺の看板を発見!
この辺りには野生のサルも生息しています。幼少期にサルに荷物を強奪された苦い思い出を持つ僕ですが、ここのサルは決して自分から人間に近づこうとはしないので適度な距離感で観察できました。かわいい、かわいい。
野生のサルに気を取られながらも階段を上って行くと……なんだこれは!突如として金の像が姿を現しました。
歩みを進める毎に視界に現れる新しい金の像。最終的には両側からお出迎えです。
さて、万仏寺と言うくらいですからこの金の像が1万体あって、それが全て「仏」という事になると思うのですが、実際にはどう見ても金箔を塗りたくられた人間にしか見えません。総じて言えるのは揃って僧衣を身にまとっているという事だけ。「人間味溢れる仙人」と言ったほうが近いのかも知れません。
驚いたのは、ひとつとして同じ顔が無く、今すぐ動きだしそうな不気味な生々しさを醸し出している事。一体だけ本物の人間が紛れ込んでいても気付きません。
得意げに何かを話しかけてきそうな像。
罰ゲームで金メッキの池に落ちた芸人のよう。どう見ても天上世界の方には見えません!
これだけいるとありがたみや神々しさは一切ありません…。
両側を金色の像にはさまれ、異様な空気の中をのぼって行くと、
ようやく「仏」らしいご利益のありそうな仏像が現れました。
おびただしい数の金の像が現れてから5分ほど登ると、丘の頂上には一見普通の中国式の寺院がありました。
各階から金の像が覗いている以外はごく普通の仏塔。
しかし油断は大敵、よくよく見てみると境内には今まで見たものに輪をかけてツッコミ所満載の仏像がうようよしていました。
動物に乗って勢揃いの仏レンジャー。
まゆ毛の処理を怠ったようです。
仏像というよりは何かのゲームの大ボスです。こんなに手があって便利なんだろうか…?
ジャンケンが始まりそうな緊迫した雰囲気。
一人で訪れても楽しめる事請け合いです。
手の長さが訳の分からない事になっています。ワンピ○スのような世界観。
手が長い仏が居たかと思えばこちらは驚異的なプロポーション。
髪の毛を剃り落とす事から、出家して仏教僧に転じる事を日本の古い言葉で「御髪(みぐし)を下す」と言いますが、彼の場合は剃れる部分は全部剃ってしまったようです。
やりたい放題の仏教ワールドですが、こんなお寺を誰が何の為に建立したのでしょうか?Wikipedia(英語版)によると1949年に月渓法師という僧侶が建設を始め、完成したのは1957年だそう。実は金の像は1万3千体もあるらしく、像の大部分が揃ったのは寺院の完成から更に10年後の事。
更に驚くべきことに、月渓法師は当初、仏教の学校を開こうとしていたようです。これらの像を用いて何を教えようとしていたのか…とても気になりますが、残念ながら月渓法師は既にあちらの世界に行ってしまったので確かめる術はありません。
(ちなみに月渓法師のミイラが本堂の中央部で安置されているそうです!僕が訪れた時は、周りの像の主張が強すぎてまるで気づきませんでした)
境内で思う存分に混沌とした仏教世界を楽しんだ後は帰路に就く事になりますが、来た道を戻るのを嫌うのが旅人の性(さが)。そんな心情を知ってか知らずかこの寺院には、もうひとつふもとまで下りられる道が用意されています。もちろん、こちらも金の像盛り沢山です。
子供達にもてあそばれて身動きが取れない像、
人の内緒話をこっそり教えてくれそうな像、
おじいさんにもおばあさんにも見える中性的な像。
寺院に行ったはずが、帰る頃にはテーマパークで遊び尽くしたかのようなパラダイムシフトを起こすこと間違いなしの万仏寺。一人で行っても大勢で行ってもネタに困る事は無いので、香港で都会の喧騒に疲れた時に訪れてみてはいかかでしょうか?
文・写真:植竹智裕
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