奴隷の街・ポトシの労働祭では子供の芝居が笑えない【ボリビア】

2017.10.02 07:00 
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コカと酒を身につけ行進する男子に、応援するだけの女子。負の世界遺産とも言われるボリビア・ポトシ。メーデー(労働者の祭典)の夜のパレードに、思うことがありました。

 

こんにちは。世界をゆる〜く放浪中の旅人、カイです。

今回はボリビアの南部の街ポトシから、労働者の祭典・メーデー祭にたまたま出くわすことができたので、その模様をレポートしたいと思います。

 

負の世界遺産とも言われる、ボリビア・ポトシのセロ・リコ銀山

ボリビアの南部に位置する街ポトシ。この街にはセロ・リコ(豊かな丘)という名前の現役の銀山があり、いまも多くの鉱夫たちが暮らしています。

 

このセロ・リコ銀山は、16世紀にスペインが中南米に植民地を拡大していた時代、その植民地経済を支えるため多くのインディヘナ(中南米の原住民)たちが過酷な鉱山労働に駆り出され、彼らの多くが命を落としていった場所。

この銀山は世界遺産にも登録されていて、その奴隷制度の歴史などから負の世界遺産にも数えられています。

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ポトシでは今でも労働に関する問題や訴訟が多いらしく、街中にはカフェテリアや商店よりも弁護士事務所が多くありました。

首都機能がラパスに移動したあとも最高裁判所だけはポトシに近い憲法上の首都スクレに置かれているのもそういった事情があるのではないでしょうか。

 

ボリビア・ポトシのメーデー祭(労働祭)

そんなポトシを訪れたのは4月の終わり。ちょうどメーデー(5月1日)の前の週末でした。

 

メーデー(May Day)直訳すれば「5月の日」は、世界各地で毎年5月1日に行われる祭典。ヨーロッパでは夏の訪れを祝う日である一方、労働者が統一して権利要求と国際連携の活動を行う日でもある。「労働(者)の日」ともいう

https://ja.wikipedia.org/wiki/メーデー

 

昼間のポトシの町はこれといって変わった点もなく、いたって普通なボリビアの田舎町といった風でした。

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しかし、夜になってポトシの町中を歩いていると、どこからか太鼓とトランペットの音が・・・
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夜の労働祭に現れるポトシの子供たち

ポトシのメインストリートの近くを歩いていると、音の正体がだんだんと近づいてきました。
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なんだ?なんだ?と思っていると、

鉱夫に扮した子供達が手に金槌を持ち、ダイナマイト(もちろん作り物)を背負って通りを練り歩いていきます。
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子供達の衣装はけっこう本格的で、聞くと町のお母さんたちが数ヶ月をかけて制作するそう。
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ミニ鉱山台車には「VIVA POTOSI」の文字が。一生懸命台車を押す子供達もしっかり鉱夫を熱演しています。
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中にはセロ・リコ銀山で「 Tio(ティオ): おじさん」と呼ばれる悪魔に扮した人の姿も。全てが本格的。IMG_7439

 

小学生達が扮するポトシの文化

実はこの祭り、ポトシの町の全小学校(町には二つ小学校があるんだとか)の2年生の学年の子供達が毎年一回行っている銀山労働者を讃えるための祭りで、メーデーの前の週末に毎年開催されるのだそう。
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出演するのは基本的に男の子たちだけで、少人数の女の子たちを除いて女子は応援に回るのが普通。鉱山は男の仕事だからだそうです。
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パレードの最前列には先導する車がいて、そのグループのクラス表記が書かれていました。写真の車は多分2年C組の車。
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町をぐるっと一回りしてポトシの中心広場に来ると、ひときわ大きなパフォーマンスを行って観客を楽しませます。審査員のような人達もちらほらいたのでなにかしらの優劣をつけているのかもしれません。
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子供達の腰にはコカと酒

頭にはヘッドライト、口には鉱山用マスク、手には掘削機と金槌、腰にはコカの葉っぱと度数90%のアルコールが。銀山労働では疲労と恐怖を紛らわせるために今でもコカとアルコールが欠かせないそうです。
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こんな小さな子供たちも一生懸命、踊っていました。
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また、こどもたちだけでなくお母さんの姿も。お母さんの方がノリノリの笑顔だったり。ラテンのオカンはどこまでも陽気。
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ポトシのこのパレードの意味

近くでこのパレードを見ていた人曰く、この祭は、鉱山労働者を讃える祭であり、この町と自分たちの生活を造ってくれた人たちへの尊敬と感謝を表すためのものであること、そして、そういった人たちがいたことを勉強した上で、自分がどう働いていくかを考えるきっかけをつくるためのものである、というのです。
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奴隷労働に駆り出された人たちの子孫は、こんな風にして自分たちの祖先と町の歴史、働くことを真剣に考えて、体現していたとは。脱帽です。

 

ポトシの街で「働くこと」について考える

子供達の目は真剣そのもので、その気迫から感じたのは、鉱夫たちに対する尊敬と誇り。奴隷として連れてこられた人たちの末裔は、「働くこと」という点で、彼らの祖先とつながっているようでした。
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「鉱山での仕事はとてもきつい。でもそれが俺たちの仕事なんだ」

 

セロ・リコ銀山では銀山内を見学できるツアーも開催されていて、そこで鉱夫の一人がそう話してくれました。
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自分たちの仕事に対する誇り。銀山の鉱夫も、街のこどもたちからも、ひしひしと伝わってくるそれらの気持ちに触れ、私の心にも何かぐっと揺さぶられるものがあったのも事実。
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今現在、無期限で世界放浪中の筆者。もちろん無職です。

目的もなく自由にふらふらする放浪の旅も、日本を出てからもうすぐ2年。自由を謳歌するのももちろん楽しいのですが、ポトシの町で強く思ったのは「あ、働きたい・・・!」ということ。

多方面で「働き方」が問題視されている今の日本ですが、基本に立ち返ってみると、誇りを持って働く、誇りを持てる仕事をするって大切なことなんじゃないかなと。そして、それってとってもすてきなことだと思うのです。(無職人間の戯言ですが)

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「明日も仕事だよ!カカカカカ」

一緒にパレードを見ていたおじさんはそういって帰っていきました。ポトシの町は土日も関係なく毎日が仕事。それが日常なのです。

 

メーデー(5月)はボリビア・ポトシの街へ

そんなポトシのメーデー祭。子供達の列は延々と続き、夜も深夜になったころにやっとお開きになりました。
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ふらっと立ち寄ったボリビアの田舎街で、まさかこんなにも「働くこと」について考えさせられる場面に出くわすとは。

多くの奴隷労働者がその身を捧げた、負の世界遺産ポトシ。そこでのメーデー(労働祭)はとてもスペシャルで、とても興味深い一夜でした。

 

まだまだ筆者の放浪旅は続いていきますが、またいつか働く日が来たら、ポトシの街を練り歩く子供達の姿を思い出そうと思います。きっと、彼らの姿が「働くこと」について、前向きな自分を思い出させてくれるでしょう。

メーデー(5月1日)近くにボリビアに訪れる際は、メーデーの前の週末に開かれるポトシの祭を是非覗いてみてください。きっといろいろと考えることがあるのではないでしょうか。個人的にはとても、おすすめです。

以上、ボリビアよりカイでした。

 


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カイリカコ

カイリカコ

1989年千葉県生まれ。B型っぽいO型よりのA型。ガジェット系雑誌・Webサイトの広告マンを2年半務めたあと退職し、かねてより計画していた世界放浪をスタート。「そよかぜのように旅をする」をモットーに、世界のどこかをそよりと放浪中。▶︎Blog(そよかぜ旅日記)▶︎Instagram(@soyotabi_rkk)

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