アイルランドを代表するソーダブレッドというパンをご存知?すごーく美味しいパンなのですが、このパンがすごーくポロポロこぼれるんです笑。そのポロポロには深い理由があったのではないかというお話です。
みなさん、おはようございます!連載・みんなのあさごはん!の水島早苗です。
アイルランドにはソーダブレッド(写真)という独特のパンがあります。私がアイルランドに来た理由はこのパンを食べに来たからと言ってもいいくらいで、他の国では食べる機会がないパンなのです!
普通のパンのようにふわふわしているのではなく、ざっくりした食感が特長です。素朴な味ながらも、ミルクが加えられて作られているので、ほんのり甘くて、とっても美味しい!久しぶりにパンで感動を覚えました。
そんなお気に入りのパンなのですが、ひとつだけ問題が…。ちょっと食べにくいんです。
パンは丸ごと買うのが一番!だと思っているので、美味しいパンに出会ったときのために、よく切れるパン切りナイフを持って旅をしています。パン屋さんからソーダブレッドは「薄く切ってバターを塗ると美味しいよ!」とアドバイスをもらって、自慢のナイフでうすーくを切ったのですが、大切なパンがボロボロになってしまいました。
しかし、ある時、ソーダブレッドへの見方が変わる出来事がありました。
アイルランドのドゥーリンという町でDoolin Hostelというホステルに滞在しました。町こそとても小さいのですが、観光客が多く集まる町として有名です。
ある日、ホステルのスタッフ・デイビッドが教えてくれました。
「アイルランドは昔、飢饉があってたくさんの人が亡くなってしまった。畑で作物が採れなくなって、このあたりの人たちは海辺で岩海苔や打ち上げられた昆布、名前のない小さな貝を食べて飢えを凌いだそうだよ」
私はドイツでパン屋修行をしていたことがあるのですが、そのときにもこのアイルランドの飢饉について聞いたことがあります。
「アイルランドのパン屋は今でも小麦粉の一粒も無駄にしないように使っている」
小麦粉の一粒…。それくらい食べ物に困っていたということなんですね。
100年以上も前の話ですが、デイビッドの話がとても印象的だったので、海辺に行ってみました。
打ち捨てられた廃船は見つけたものの、岩海苔も小さな貝も見つけられず。
波に打ち上げられた昆布を見つけましたが、食べられるかどうかわかりません。当時、私がここの住民だったら、きっと死んでしまっていたでしょう笑。お腹が空いたらスーパーや食堂で食べ物を手に入れられる。これは本当に恵まれたことなのだと思いました。
ホステルでも毎朝、ソーダブレッドが出されました。奥の食パンと比べて、ソーダブレッドの減りを見ればその人気は一目瞭然!
コーヒーとクランベリージュース、ソーダブレッドとナッツ・フルーツ入りのヨーグルトをいただきます!
お皿にこぼれたソーダブレッドの小さなかけらも丁寧に食べるよう気を付けました。
ひょっとすると、ソーダブレッドがポロポロするのは、食べ物を大切にすることを忘れないためなのかもしれません。
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