物騒なニュースが絶えないチベットを自転車で回ってわかった1つのこと

チベットをタンデム（二人乗り）自転車で回り、たくさんのチベット人と触れ合ってきたsawaです。つい先日までチベット仏教の最高指導者ダライラマ14世が来日していましたが、チベットといえばどんなイメージをお持ちでしょうか？

 

2013年11月に来日し、東京、静岡、京都などで講演を行ったダライラマ14世

photo by abhikrama

 

◆チベットに対する「怖い」イメージ

旅をするまで僕は、近年の中国政府に抗議するチベット人の焼身自殺のニュースを見るたび、チベットに対して怖い、得体の知れないイメージを持っていました。

 

チベット族僧侶が焼身自殺図る 中国、抑圧統治に抗議
http://sankei.jp.msn.com/world/news/131112/chn13111212530002-n1.htm

チベット族の男性が焼身自殺　中国当局の高圧的統治に抗議？
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130929/chn13092917390007-n1.htm

 

しかし、僕が自転車でチベットを回って目にしたのは、自分たちの文化に誇りを持ち、どこまでも旅人に優しいチベット人の姿でした。

 

◆中国政府はチベットを警戒

中国国内ではダライラマ14世を、暴動を起こしているテロリスト組織の指導者とみなしています。また、ダライラマを信仰しているチベット仏教を悪の根源として弾圧してきました。

 

チベット人が多く住むエリアを走っていると、至る所で軍や警察を目にし、中国がどれほどチベットを警戒しているかが分かります（四川省ガンゼ）
 

 

バリケードを設置して警戒する政府の施設（四川省リタン）
  

 

街中を行進する軍隊（四川省色達）

 

チベットエリアを走ってみて、かなり漢民族（中国の人口の94%以上を占める）の流入が進んでいることを感じました。wikipediaによると中国による移住政策の結果、600万人のチベット人が暮らしている地域に、750万人もの中国人が流入したとのこと。

言語、文化、伝統などチベット独自の文化が刻々と消えている現状があり、チベット人は大きな危機感を抱いているようです。

 

◆僕の見たチベット仏教

チベット人の住むエリアには必ずと言っていいほどチベット仏教のゴンパ（寺）があります。

 

こんな秘境にだってゴンパはあります。

 

ゴンパでは日夜、大勢の僧侶達が修行に勤しんでいます。

 

中国政府はダライラマの肖像画を飾ることを禁じていますが、ゴンパには飾られていることがあります。

 

大きな竃でご飯を作っているところ。僧侶達は寺で集団生活をしているのです。

 

宿坊（僧侶が寝泊まりする部屋）に招かれた事もありました。話した内容はダライラマのこと。彼らはダライラマがよく日本に行って講演している事を知っていました。

 

チベット人の主食ツァンパをご馳走してもらいました。大麦の粉とヤクからできたバターをお茶で混ぜて、団子状にして食べます。

 

僧侶は皆、フレンドリーに接してくれました。お互い、あご髭があるというだけで喜んでくれるのです。

 

ある時は草原でピクニックをしていた僧侶たちに出会いました。

 

チベット人は好奇心が旺盛で、新しいものが大好き。我々の自転車も乗っ取られてしまいました（笑）

 

子供の僧侶にもたくさん出会いました。

 

時には、パンクした自転車の修理を手伝ってくれたり……。 

 

そんな僧侶をみんなとても尊敬しています。チベットの祭りで偉い僧侶と遭遇した記事はこちら

 

◆信仰深いチベットの人々

チベット人には、常にマニ車という輪車を回し祈っているほど信仰深い人々がいます。マニ車の中には経典が入っており、一周回すと一回経典を読んだことになります。

 

ゴンパや仏塔の周りには、必ずマニ車があります。

 

中にはこんなに巨大なマニ車も！

 

さらに熱心な信者は五体投地（五体すなわち両手・両膝・額を地面に投げ伏す礼拝方法）しながら、聖地カイラス山を目指します。なんとカイラスに着くまでに1年、2年かかる事もあります。

 

 

五体倒地の動画

 

カイラス山に巡礼することはチベット人にとって特別な意味を持ちます。

 

◆チベット人のお宅訪問！

工事現場で働くたくましいチベット人の女性たち。笑顔が素敵です。

 

チベット式の茶屋に行くと……

 

撮影大会になるほど日本人に好意的です！　※左端がうちの嫁

 

田舎を走行中、家に招かれた事は数知れず。

 

チベット人家族の一家団欒の様子

 

 

たくさんのお菓子と紅茶でもてなしてもらいました。

 

◆遊牧民のテントへお邪魔します

高原地帯には遊牧民のチベット人が住んでいます。最近は、バイクに乗っている若者の遊牧民も多いですが、やはりチベット人は馬に乗っている方がさまになります。

 

遊牧民がわざわざ、バイクで追いかけて来ることも……。

 

 

遊牧民の子供達に囲まれる自転車。

 

標高4000mを超える荒涼とした大地を走っていた時、

 

遊牧民のテントに招かれました。彼らは突然現れた我々に、テントで寝ていくよう言ってくれました。

 

貧しい生活であることが容易に想像できます。

 

おばあさんとお孫さん

 

ヨーグルトを作っているところ。完全に自給自足のテント生活です。

 

遊牧民の赤ちゃん。厳しい環境でたくましく生きています。

 

チベット人はいつでも、突然自転車で現れた珍客を優しい眼差しで出迎え、もてなしてくれました。乏しい大地で暮らし、厳しいチベット仏教を信仰しているチベット人ですが、心はどこまでも広く豊かに感じました。

 

文・写真：hirokazu sawa