ツアーの語り部はなんと、韓国へ脱北してきた女性……!脱北者と一緒に、韓国と北朝鮮の国境にある板門店に行ってきました。
こんにちは!しゃんいえーです。現在、中国の江蘇省にある蘇州(そしゅう)(上海から西へ2時間くらい)に留学中の大学生です♪
2014年、朝鮮の南北分断を象徴する板門店を訪問するツアーに参加しました。
板門店は、朝鮮半島中間部に位置する朝鮮戦争停戦のための軍事境界線上にある地区である。60年以上に渡る朝鮮の南北分断を象徴する場所となっている。国連軍と朝鮮人民軍の停戦協定に基づく「中立国監視委員会」と「軍事停戦委員会」の本会議場が設置され、韓国側からは外国人向け板門店見学の定期ツアーが行われている。Wikipediaより引用
このツアーは、ただ板門店に行くだけではありませんでした。脱北した女性が語り部として同行していたのです。今回は、この女性やガイドさん(韓国人)の話を交えながら、板門店の様子をリポートしたいと思います。
一人娘の為に脱北を決意
2011年に脱北したAさん。一人娘の為に一生懸命、北朝鮮で働いていましたが、全くお給料をもらえませんでした。当時の北朝鮮の一般市民の平均月収はわずか300円ほど。このままでは娘の将来が無い、と脱北を決意し、ブローカーを通じて北朝鮮からタイを経由して韓国へ。その費用は70~80万円。現在、娘さんは海外に留学して勉強しているそうです。
緊迫した会議場
板門店の中心にある会議場と呼ばれる青い建物に入る前、「挑発行為に当たるので、北朝鮮側に指を指さないで下さい!」と言われて、注意されたことを逆にやらかしてしまう私は、怖くなってずっと手をグーにしていました。緊張感がすごく、空気が張りつめています。
板門店の軍人になるための条件
板門店には政府関係者など様々な人々が訪問するため、韓国側の軍人は身長176cm以上であること、4年制以上の大学を卒業していること、高度な英会話能力が条件とされます。顔は関係ないらしいですが、私達が板門店を訪れた時のバスに監視役として乗車した軍人さんはめっちゃかっこよかったです。ちなみに北朝鮮側の軍人は、脱北しないようにするため豊かな生活が保障されています。
脱北者は韓国でどうやって暮らしているのか
Aさんは現在、韓国で生活しています。脱北者であることは、周囲の人も理解してくれています。というのも、今の生活を始める前に多くの検査を受けて、危険人物ではないということが十分に確認されているから。韓国からはアパートが支給されており、住民は脱北者ばかり。北朝鮮人だからといって、韓国社会の中で差別を受けたことはないそうですが、訛りが強いため、北朝鮮人だということはすぐに気付かれるそう。
不自由な「自由の村」がある
余談ですが韓国には、北朝鮮との国境地帯に「自由の村」と呼ばれる村があり、住民は韓国人の義務である納税・徴兵を免除、多額の生活費を支給されます。ただし、夜10時以降は外出できないなどの厳しい規則があります。また、現在は世襲制となっており、新しく住民となるには、住民の男性と結婚しなくてはなりません。
渡ったら最後「帰らざる橋」
朝鮮戦争停戦後に捕虜達が渡った「帰らざる橋」。向こう側は北朝鮮。双方の捕虜が、韓国側、北朝鮮側のどちらに進むかを選択することができました。しかし、一度渡ったら、二度と戻ることは許されませんでした。当時の兵士達の祖国への愛、誇り、自由に対する渇望……様々な思いの詰まったこの橋は、停戦から60年以上経過した今でも、もの悲しさを漂わせています。
脱北の「お金」の話
脱北者は莫大な脱北費用をどのようにして賄うのでしょうか?その方法の一つに、「既に脱北している人から資金を提供してもらう」というものがあります。ブローカー自身も脱北を経験している場合が多いのだとか。しかし、近年は、脱北の成功率がますます下がってきていて、脱北が発覚すると数年の刑務所生活を送ることになり、脱北の目的や亡命先によって、刑の重さは異なるそうです。
板門店にも土産物屋があった
「FREEDOM IS NOT FREE」と裏側に書かれているのが妙に印象に残って買ったマグカップ。板門店の売店にて。っていうか売店がありました…。
北朝鮮の紙幣も購入!30000~40000ウォン(約3000~4000円)くらいです。10000~30000ウォン(約1000~3000円)くらいの北朝鮮のお酒も売っていました。ちなみに女性に話題の美容品「CCクリーム」が10000ウォン(約1000円)以下と激安です。CCクリームのお買い求めは板門店で。
ツアーの最後に20000ウォン(約2000円)で購入した冊子には、日本語による板門店の紹介と、会談場で撮影した写真が挟んであります。兵士を境に、韓国側と北朝鮮側に分断され……撮影時、私達は北朝鮮側にいます。どんな顔をすればいいか分かりませんでした。
板門店の訪問を終えて
いかがでしたか。日本と同じように見える韓国ですが、その背景には1つの国を分断させられてしまったという悲しい過去があり、国境の先には今も生活に苦しみながら暮らしている人達がいます。Aさんに出会って、私達がなかなかお目にかかれない北朝鮮の人も、同じ人間なのだ、と改めて感じさせられました。Aさんは娘の未来を思う、どこにでもいる母親でした。
最後に、ガイドさんの名言を。
「(板門店で)走ったら亡命すると思われて軍人に追いかけられるので、気になる人は試しに走ってみて下さい(笑)」
「皆さんのおかげで今日も銃撃戦に遭わずに済みました(笑)」
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