僕のコンプレックス
こんにちは!極貧バックパッカーの植竹智裕(うえたけともひろ)です。
ネパールでは4日連続で東西南北に歩き続けたり、キルギスでは現地通貨を入手できずに夜中の街を彷徨ったりとなかなか身体を酷使して旅を続けておりますが、もともと身体を動かすのが得意だった訳ではありません。むしろ学生時代、一番嫌いな科目は体育でした。マラソンをすれば真ん中よりちょっと後ろでゾンビ状態、球技をやらせればボールは凶器に早変わり。よく「サッカーやってそう」と言われますが、色黒なだけです。それが旅に出て数か月、どうしてこんな事になってしまったのでしょうか……。
ネパールでの三日間を例に、運動音痴な僕が日頃、どんな事を考えて、どんな行動を取っていたらこんな肉体派バックパッカーになってしまったのかをご紹介します。
ネパールとは
「南アジアの共和制国家。国土は世界最高地点エベレスト(サガルマータ)を含むヒマラヤ山脈および中央部丘陵地帯と、南部のタライ平原から成る。ヒマラヤ登山の玄関口としての役割を果たしている」(Wikipediaより引用)
貧乏バックパッカーはとにかく歩く!
ネパールと言えばヒマラヤ山脈、そして、出会う旅人は皆こぞってトレッキングに出かけて行きます。僕もヒマラヤの山が見たくなってきちゃいました。しかし、荷物を担いで何十キロも歩くなんて自信はありません。そんな運動音痴な僕にも山を拝むチャンスを与えてくれる場所がありました。それがネパール第2の都市ポカラです。
湖のほとりにあるポカラは小高い山に囲まれ、ちょっと頑張って山に登れば遥かヒマラヤのアンナプルナ連峰が見渡せるという運動音痴に優しい場所です。これなら僕でもヒマラヤが見られる!
早速、10キロ(約2時間)程歩いて湖南岸の山に登ってみる事にしました。運動神経皆無の僕ですが、片道2時間程度の距離だったら交通費がもったいないので歩くように心がけてます。貧乏バックパッカーなので……。決してせかせか歩いている訳ではありません。バスや電車からは見られない景色を味わいながらゆっくりと歩きます。ケチるって悪い事ばかりじゃないんですよ。
到着しました。こちらは山の上にある日本山妙法寺(日本のお寺が平和を願って建てた仏塔)。ここが目指したビューポイントだったのですが……
問題発生!山がよく見えない!辛うじて先っちょだけ見えてますが、雲と混じってよく分かりません!
昼の三時まで粘っても雲が晴れる気配が無かったので下山しましたが……日が傾いて来た頃、ふと遠くの空を見て言葉を失いました。山がくっきりと見えているではありませんか!あと1時間粘っていれば絶景が拝めただろうに……。山の天気は変わりやすいって本当なんですね。
目的の為ならとにかく歩く!
負けず嫌いをこじらせて、翌日、こちらも初心者向けのサランコットの丘に登ってみました。ガイドブックによると街の中心からの所要時間は2時間半。休憩を挟みながら3時間半かけてのんびり登りました。休み休み登れば運動音痴だって山くらい登れるんです。
日頃の長時間歩行が功を奏したのか、あまり疲れは感じませんでした。まだまだ登ります。
頂上に着いたのは13時過ぎ。感動のアンナプルナ連峰とのご対面のはずが……山が無い!雲がかかっていてアンナプルナは見えませんでした。
前日の教訓から日没まで粘りましたが、この日も山は見えず……。諦めて下山しました。かつてマラソンではゾンビ走りを披露していた僕が、下山時に音楽を聴きながら小躍りする余裕さえ持てるようになったのも日々の交通費節約の賜物。人間って変われるものです。
原動力は好奇心と意地
宿の方によると、日の出から正午辺りが山がよく見える時間だそうです。同じ宿のお客さんが翌日、タクシーをチャーターして、サランコットの日の出を観に行くそうで、「シェアしてはどうか」と言ってくれました。しかし、シェアしても一人当たり700ルピー(約825円)……。時に人は決断を迫られる時があります。お金をかけて楽するか、苦労してでもお金を節約するか……。僕が選んだのはもちろん後者でした。日が出るのは6時頃。ならば3時半に出れば、山も日の出も一緒に見られる計算になります。
真夜中の登山決行
しかし、宿を出た途端に最初の試練が襲いました。表には街灯が無く、ライトで照らさないと足元すらよく見えません。そんな真っ暗な通りを……
灯りも持たずヨタヨタ歩いて帰って来る外国人カップルを見て、一体何処で何をしてたのかと訝しげに思いながら先を急ぎます。
そして30分後、登山道の入り口に到着。ここからはしばらく人里離れた山の中を進みます。クマ対策に鈴を装備して石段を登り始めた刹那、背後の茂みで小さい何かが動き、僕の恐怖心に火を点けました。運動神経が云々などと言っていられません。時折、呼吸を整えつつ、一段飛ばしで駆け上がります。
なんと途中の集落まで、前日に2時間かけた道のりを1時間で到着しました。ここからは野生動物に遭遇する危険は減りますが、今度は僕の中には存在しなかったはずのアスリート魂に火が点いてしまいました。かつての僕なら無関心だった「ベストタイム」を目指す事に。
そして、頂上まで所要2時間半の道のりをなんと1時間半で登る事に成功!自分を褒めてあげたいです。
苦労した分、感動も人一倍
早く着いたのはいいのですが、早く着き過ぎました。汗も冷え、命のろうそくが消えかけようとしています。体育の時間によくこうやってジャージに膝を入れてましたよね。大嫌いだった体育の授業の思い出が走馬灯のように流れて行きます。しばらくすると……
サランコットの尾根には、日の出を観に来た観光客を乗せたタクシーのライトが列を為し、展望台もあっという間に外国人だらけになりました。
それまで暗闇の中で雲だと思っていたものが徐々に明るく照らされ、それが山だと分かりました。アンナプルナです!
遂に!遂に拝む事が出来ました。二日通った上に、お金をケチって苦労した分、感動も人一倍。朝霧でやや霞んではいましたが、目頭が熱くなるような景色でした。
トラ出没注意
無事にヒマラヤの山々を拝む事が出来ましたが、途中で遭遇した小さな生き物は何だったのでしょうか?食堂に入った際、地元の娘さんに「この辺りで野生動物は出るの?」と尋ねてみたところ、クマやイノシシは出ないそうです。代わりに「たまにトラが出るわ。鳴き声しか聞いた事無いけど、ネコちゃんが森に行って食べられちゃったの」と言われました。「ほぅ、トラはネコまで食べるのか……」と感心している場合じゃありません。同じ仲間のネコだって食べちゃうトラなら人間も……。むしろクマ除けに装備していた鈴だって、ネコの仲間なら喜んで寄って来そうな気すらします。
運動オンチの僕が遂げた進化
普段から交通費をケチって歩いていましたが、一見惨めなその行為を通じて、運動音痴な僕は密やかに進化を遂げていたようです。体力だけは10代の頃よりも格段にレベルアップしたと胸を張って言えるようになりました。運動能力は生まれ持った才能だから決して変える事は出来ないと難しく考えていましたが、どうやら信念(僕の場合は貧乏を貫く事)や目的があれば、人ってどれだけでも変われるものなのかも知れないなぁと思いました。子供の頃に苦手だった事って誰にでも一つや二つはあると思いますが、大人になってからもう一度挑戦してみると意外と簡単に出来ちゃったりして……。
文・写真:植竹智裕
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