こんにちは!極貧バックパッカーの植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は、5月初旬にウクライナに滞在しました。
ウクライナとは
「東ヨーロッパの国。歴史的・文化的には中央・東ヨーロッパの国々との関係も深いが、ソビエト連邦内の構成国で1991年ソ連崩壊に伴い独立。首都はキエフ」(Wikipediaより引用)
首都キエフは世界遺産に登録されている聖堂もあり、
しかし、そんなオシャレな場所で、ちょっと変わった博物館を発見してしまいました。
なんと、トイレの歴史博物館があるというのです。汚い臭いなどの理由からタブー視される事が多いトイレですが、その歴史ってちょっと気になる!という訳で今回はトイレの歴史についてご紹介したいと思います。
※お食事(特にカレーライス)の前後の方は、時間を改めてお読み頂いた方が両方楽しめると思います、お食事も記事も。
場所はここ。
こちらがトイレの歴史博物館の看板です。紋章をよく見てみると……便器!
壁には一面に先史時代から古代・中世・18世紀、19世紀、20世紀、21世紀と各時代ごとのトイレにまつわる資料が展示されていました。
資料は全てウクライナ語でしたが、受付のおばちゃんから英語の資料(両面)を9枚も渡されました。これは見応えがありそうです(資料を読み解きながら見て回るのに2時間かかりました)。
資料によると、先史時代の人々は決まった家やトイレを持たずに自然の中で用を足していたそうですが、その後、定住するようになり、現在分かっている最古のトイレは紀元前3000年頃のメソポタミア文明のものだそうです。その頃には排水設備が整っていたというのも驚きです。写真は当時の便器の模型。
古代の中国では王が亡くなると死後も生活に不自由しないように地下の墓地に宮殿を併設したそうで、紀元前2世紀の王墓からはトイレも発見されています。
中世のお城のトイレは汚物が地下約12メートルの肥溜めに落ちて、自然に分解されるのを待つ仕組みだったそうですが、悪臭や、床が腐って肥溜めに崩落する事があった為、次第に城外の排水溝や貯水池に流し込まれる仕組みになっていったそうです。
また、こちらはドイツのお城の模型ですが、右奥の塔をよく見てみると……
便器が並んでいました。昔はここで用を足して、真下の林や川にそのまま垂れ流していたんですね。
ローマ帝国の公衆浴場には仕切りが無く、大理石の便座の貴族向け公衆便所が建てられ、悪臭を消す為に、奴隷が香水や水を運んだそうです。
更に大理石の冷たい便座を温める為に、貴族が利用するまでそこに座って便座を温めておく為の奴隷も存在したとの事。
中世ヨーロッパの都市部で建物が密集するようになり、一般家庭ではこのように中央の窪みに鍋を置いたトイレで用を足し、汚物は表通りを流れる排水溝に捨てていたそうです。
しかも高層階に住む人達は窓から汚物を投げ捨てていたそうで、1270年には「高層階からの投げ捨てを禁止」する法律ができたものの誰も従わず、1375年には「水に気を付けて!」と三回叫ぶ事を条件に窓からの投げ捨ても認められたのだとか。そんな時代に生まれなくて良かった……。
当時は汚物だけでなく投げ捨てられたゴミや家畜のフンなどもあり、道は汚物だらけだったヨーロッパの都市。実は今では女性のファッションの一部になっているハイヒールも、汚物を踏む面積を減らす為に開発されたもので、後に戦争が起こり、機能性が重視されるまでは男性もハイヒールを履いていたそうです。そんな時代に生まれなくて本当に良かった……。
ここまででもかなり衝撃的なトイレ事情でしたが、近代的な便器や下水道の設計・開発に貢献した人々の資料もありました。彼らの努力が無ければ、もしかしたら今でもヨーロッパの道端には汚物が転がっていて、男女ともにハイヒール無しでは生活できない社会が続いていたかも知れません。
そして意外な事に、あのレオナルド・ダ・ヴィンチもトイレの設計をしていたそうです。設計図を見る限りでは現在のトイレとは程遠いですが、それ程、当時の人からしたらトイレの改善は関心が高かったのかも知れませんね。
船や鉄道、飛行機に乗って用を足した時、それらが一体何処に流れていくのか気になった事はありませんか?それについてもしっかり資料で説明されていました。曰く「鉄道と船は古くはそのまま垂れ流しだったが、現在はタンクに溜めてまとめて処理するのが一般的」だそうです。とは言ってもまだ垂れ流しのトイレは残っています。便器を覗くと線路が見えたり、駅が臭くなるので停車中にトイレの使用が禁じられているところもあります(僕も知らずにウズベキスタンの鉄道で停車中に用を足して警察に連れて行かれそうな勢いで叱られた事があります)。
更に21世紀のコーナーにはアメリカやソ連のロケットに搭載されたトイレ設備の解説もありました。
博物館の大部分はトイレの歴史に関する資料でしたが、各国のユニークなトイレ事情についての資料もありました。それによればイギリスには決まった時間だけ地中から登場する「ジャンピング・トイレ」(用を足している間に終了時刻を迎えたらどうするんでしょう)や、
内側からは外が見える、羞恥心をくすぐるマジックミラートイレがあるそうです。
インドの青空トイレなども紹介されていました。現代社会からすれば、奇異な物として見えてしまいますが、これもトイレの長い歴史を物語るひとつの貴重な資料なのかも知れません。
他には世界各国から集めたと思われるトイレ関連の小物も展示されていました。
インテリアで並んでいても違和感がなさそうな置物。こんなのお土産で売ってたら買っちゃいそうだなぁ。
そんな期待を胸に向かったお土産物コーナーで見つけたのは……トイレ型の眼鏡。あまり惹かれません。
そして……なんと限りなく本物に近く作られたウ○コの模型が25フリヴニャ(約141円)で売られていました。中途半端にとぐろを巻いた姿、キュッとすぼまった先っちょ、色、全てにおいてリアル。誰が何の為に買うんでしょうね。2時間かけて沢山学んだ事が一気に吹き飛ぶような衝撃のアイテムでした。
人が生活する上で欠かせないトイレ。改めて歴史に目を向けてみると知らない事が多くて驚きました。トイレだけでなく、ハイヒール、ドライヤー、冷蔵庫に電子レンジなど、皆さんが普段何気なく使っているものも長い歴史の中で誰かが考え出して、改良を重ねたものに違いありません。意識して見て、調べてみると意外な歴史が隠されているのかも知れませんよ。
文・写真:植竹智裕
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