こんにちは。夫婦で世界一周旅行中のmiaです。
5500人を上回る死者が出ているネパール地震で、エベレストベースキャンプでは19人の死者が出たというニュースが報道されました。
編集註:TVなどで繰り返し流されたベースキャンプが雪崩に襲われる動画
わたしは去年の今頃、ネパールで23日間に及ぶトレッキング(ヒマラヤ山脈アンナプルナサーキット)に参加しました。 今回ベースキャンプ付近で亡くなられた方々に、昨年そこで出会った「シェルパ」をはじめとする登山支援者たちの姿が重なって思い出されます。
ヒマラヤ登山に欠かせない「シェルパ」とは?
シェルパとはもともとチベット東部地域で暮らしていて、17~18世紀にヒマラヤを越えてネパールへ移住してきた民族のことを指します。また、高所に順応した身体能力や知識が評価され、ヒマラヤ登山に欠かせない存在となってから、ヒマラヤにおけるシェルパ族以外のポーターやガイド全般をシェルパと呼ぶ例もあります。Wikipedia参照。
「自分はシェルパ民族の出である」と自己紹介をしてきたのは、山岳料理人のソナンさん。標高3310m地点にあるアッパーピサンという村の小さな宿で出会いました。
以前、味噌汁をふるまう連載の中で取り上げたことがあります→ヒマラヤのシェルパ族にみそ汁を作って食べてもらった
2人の登山家に40人のポーターがつくことも
ソナンさんは以前、ポーター兼料理人としてエベレストベースキャンプで活動していました。ソナンさんの話から気づいたのは、現在の登山客が「お客様」に転じてしまったということでした。
2人のイタリア人登山家に対し40人のポーターで同行したことがあるそうです。ポーターは、テントなどのキャンプ装備、食料、登山道具等を運びます。外国人登山家にとってポーターは安いということと、お金さえ払えば休憩用のテーブルや椅子だって運んでもらえてしまう背景があります。
ソナンさんの宿から見える風景
ポーターが死亡してもたった100万円
ソナンさんと会話をしている時に、聞こえてきたヘリコプターの音。ソナンさんは「またか」とつぶやき、「立て続けに出るポーターの遭難は、捜索費を出すポーター・ガイド所属会社の痛手にもなるんだよ」と業界人ならではの話を教えてくれました。ソナンさんの仲間が滑落したり、行方不明になったこともあるそうです。
しかし、このように危険と隣り合わせだと言うのにポーターの地位は低いです。記憶に新しい2014年4月18日のエベレスト雪崩災害。危険を伴う仕事内容に対して、遭難時に家族が受け取る保証金が4万円、死亡時は100万円というポーターの地位の低さが訴えられました。
お金を払っている立場に甘んじてしまう
また、宿のスタッフとしての苦労話もつきません。料理が遅れただけでクレームを出す、部屋やトイレを散らかして行く等、登山客がわがままであることを嘆いていました。登山客は、山にいるという事実を忘れ、お金を払っている立場に甘んじてしまうようです。
それなのに、ソナンさんは「困ったことがあれば言ってくれ」とわたしたちに声をかけてくれました。客と提供側という立場を超え、山という厳しい環境下で困っていないか、気にかけてくれたのです。彼の強さと優しさが身に染みた瞬間でした。
信仰心が現れたソナンさんの宿の壁
40キロの荷物を運ばせられることも…
ここアンナプルナサーキットのコースの最高地点は標高5416m。世界中からわたしたちのような登山客が来ます。自分に挑戦したい人、自然が好きな人、家族や仲間と団体の時間を過ごしたい人、登ったという実績が欲しい人ーーその目的は多様化しており、ポーターやガイドを雇いたがる客もたくさんいます。
残念なのは、規定の最大20キロをオーバーした荷物を運び、かつ危ない道を単独で歩いているポーターを幾度となく目にすることです。 すれ違ったポーターに話をきくと、40キロを運ばせられることは当たり前にあると言います。
私が運んだ荷物は、たったの8~10キロ(写真下)。夫はさらに二人分の水が加わった12~14キロを運びました。それでも十分辛かったです
一日あたり15~20ドルの対価
ポーターを雇っている登山客の持ち物に疑問を抱くことも度々あります。娯楽のための重い本、ヨガマット、登山とは関係のない旅グッズ、それらをポーターに持たせている様子を目にしました。ポーターが足を滑らせたらどう責任を取るつもりなのか、雇う側が想定できていないのでしょう。
なぜポーターだけが、一日あたり15~20ドルの対価でつらい思いをしているのか、考えてみてください。「お金で買ったものだから良い」という考えが登山客に存在するのでしょう。
5416m地点で撮ったポーターたち
人が人を買うという構図
人が人を買うという構図を目の当たりにしたのはショックでした。しかしそんな厳しい現状にめげず、強く優しく生きているソナンさんの姿は忘れられません。ーー「困ったことがあれば言ってくれ」と、客と提供側という垣根を越えて人として気にかけてくれたことが忘れられません。あのときのシェルパは、今頃どうしているのかーー無事を祈るばかりです。
ネパール地震募金先
日本赤十字社 2015年ネパール地震救援金
日本ユニセフ協会(緊急支援物資の配布など)
国境なき医師団(医療・緊急物資支援)
国連WFP(食料・支援物資輸送)
世界新聞では「think of NEPAL」と題してネパールのことを知ってもらう記事を掲載しています。
・ネパールと日本は「遠い国」なのか? 4年前、カトマンズで食べた「醤油ラーメン」の話
・過酷な環境で美しく生きる人々がいる。震災前に出会った6人のネパール人を想う
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