タバコも吸います、お酒も飲みます…。「世界一不良な神様」とグアテマラで出会いました。
サングラスが似合わないことで有名なデスクです。
神様と言えば、ブッダしかり、キリストしかり、アラーしかり神々しいものです。なんせ神様ですから。人々の崇拝の対象になる訳ですからその姿(偶像)も、神聖でなければいけません。やっぱり神様ですからね。
しかし、世界は広い…。すごくやさぐれた神様もいるというお話です。
僕がすごくやさぐれた神様・サンシモンと出会ったのは中米のグアテマラでした。
第二の都市ケツアルテナンゴの日本人宿に、観光客がサンシモンと撮った写真があったのです。それを見た僕は釘付けになり、笑いがこみ上げ、次の瞬間血が騒ぐのを抑えきれませんでした。
宿の管理人によると、サンシモンはケツアルテナンゴからバスで30分のスニルという街にいるとのことでした。
スニルは民族衣装を来た女性が闊歩する、外国人は間違っても寄り付かないようなローカルな街でした。
宿にサンシモンの詳しい場所を把握している人はおらず、管理人いわく「街でサンシモンどこ?と聞けば分かるから大丈夫」というなんとも頼りない状況でした。
しかし、第一村人に「ドンデエスタ(どこ) サンシモン?」と尋ねると、まさかの「あぁ、サンシモンね!サンシーモーーーン!」と陽気に返され、「サンシモンなんかすげぇ」と興奮を隠しきれませんでした。
しかし、スペイン語が分からない僕は第一村人の説明がほぼ理解できず、サンシモンを求めて街を彷徨うことに…はなりませんでした。答えは頭上にありました。
電柱にかかった青い看板…
「SAN SIMON」と「100M」という表記。これはもしや…「サンシモンまで100m」という意味なのでは?
看板に従って少し進むと今度は、「SAN SIMON」と「85M」という看板を発見!何ですか、この手の込んだ演出は。素敵すぎますサンシモン。
「次は70Mか?」と思いきや、それ以降看板はなく海外にありがちなアバウトさを露呈しましたが、見つけました。
こちらがサンシモンの館です。あたりには何かを燃やしたような臭いがたちこめていました。
館に入ろうとしたら写真の男が声をかけてきて「金を払え」と言います。入場料が5ケツアル(約50円)、写真撮影料が10ケツアル(約100円)。僕ははやる気持ちを抑えきれず、さっさと金を渡して中へ入りました。
まずは、動画でサンシモンに対面してください。ドアに入る瞬間から始まります。
僕はもう、写真を撮るのも忘れて動けずにいました。世界にはこんな「世界観」があるのかと…。今自分は人生で一番アングラな対象と向き合っているとも。
ハットにサングラスにネクタイまで…そしてほんとに、
タバコを吸っています。信者がくわえさせたものです。
膝の上に置かれた籠には、信者の人が入れたお札。
部屋の中には、似つかわしくないラテンな音楽が流れていて(動画参照)、近所の子供たちが走り回って騒いでいます。その中で静かにタバコをふかすサンシモン。シュールとはこのこと。
館の隣にあった売店(植物やローソクなどお祈りグッズがたくさん売っている)でローソクを購入して立ててみました。赤は恋愛、青は仕事など…色でご利益が違うそうです。ちなみに黒は気に入らない人に災いをもたらすという…。
期待を遥かに上回るサンシモンにもうメロメロだったのですが、僕は欲深い人間です。宿の管理人いわく、運が良ければ信者がサンシモンにお酒を飲ませるところが見られる…って見なきゃ帰れませんよ。
しかし、いつまで経ってもお酒を飲ませる信者は現れず…。館を出て、引き返していると…
「SAN SIMON」の看板を発見!なんと…サンシモンは1体ではなかったのです…!
こちらのサンシモンはもっとどぎつい世界観でした。
サングラスとタバコは同じですが、帽子や服装が1体目とは違います。ちょっと寅さんっぽい。
熱心な信者がいました。向こうには輝くサンシモン。
そして、信者がサンシモンを傾けたかと思うと…
何かをつぶやきながらお酒を飲ませはじめました。
ちなみに、飲ませたお酒は椅子の下にある洗面器(2つ前の写真)に溜まるようになっていました。なんというか、サンシモンは最初から最後まで「外さない」神様でした。
グアテマラ南西部の高地地方、特にアティトラン湖周辺の村々には「サンシモン」を祭る、マシモン信仰というのがあります。
サンシモンは民間信仰とカトリックが融合して生まれました。
この地にスペイン人が侵攻したのが1500年代。スペイン人はマヤ系先住民にキリスト教を布教しました。しかし、先住民はもともとの土着の信仰を捨ててはいませんでした。スペイン人をあざむくために、サンシモンに西洋風(スペイン風)の衣装を着せて、自らの信仰を守ったそうです(宿の管理人、こちらのページ参照)。
サンシモンの不思議な風貌は、信仰を守りぬくための知恵だったのです……。
やさぐれたとか言ってごめんね、サンシモン。
このエピソードも載っているデスクの著書もどうぞ
世界新聞ライター10人の持ち物はこちら
世界新聞の最新情報をゲット
RANKING