ふたりの子どもを連れて世界一周中の「森本家」の父・創さんのインタビューの後編をお送りします。子どもの存在が、森本家の旅を大いに彩ってくれたようです。
森本創
1981年生まれ。31歳。旭硝子㈱に8年勤めた元サラリーマン。性格は社交的かつストイック。学生時代はベトナム、インド、マケドニアに通算1年滞在。
◆「子どもたちにたくさんの変化がありました」
上左:次男・多良(出発時) 上右:多良(1年後)
下左:長男・時蔵(出発時) 下右:時蔵(1年後)
ーー出発して約1年、これまで5カ国を渡り歩いてきましたが、こども達に変化は?
ふたりともたくさんの変化がありましたね。みんなで喜んでいるのは、タラのアトピーが治ったこと。一カ国目のモンゴルで目に見えて良くなりました。
ーーなぜ?
それが分からないんですよ。本人は「でぶちん(大きく)になったからと言っていますが(笑)」
ーー他に変化といえば?
自分の足で長く歩けるように、泳げるように、馬に乗れるように、おねしょ克服、虫が恐くなくなった、食べ物の好き嫌いがなくなった、お金に関心を持つように、すすんでお手伝いするように、日本への思いが強くなった……たくさんありますね(笑)。トキゾーは怒らなくなって、タラはひょうきんになりました。
ーー虫が怖くなくなったというのは?
虫を屋内ではなく、自然の中で見るようになったからでしょうか。トキタラは「スペインでおじちゃんにカタツムリをおみやげにもらって、そのあと食べたから」って言ってます。
ーーなぜお金に関心を持ったのでしょう?
旅中、僕らがお金の話をするようになったからではないでしょうか。トキタラも旅行のお金がなくならないか心配してくれているみたいです(笑)。
あと、お手伝いするようになったのは「お手伝いしてほしそうな人(立ち止まって困った顔)がいっぱいいるから」って言ってました。
◆「子どもたちはどこにいても自然体」
ーーこども達は自分たちがしている旅を、どういう風に認識しているのでしょうか?
世界一周が何かすら分かっていないはずです。日本でしていた生活を場所を変えながら同じようにしている感じでしょうか。
ーーでも、やっぱり日本での生活とは違いますよね。
いつも両親がそばにいる代わりに大好きなジジババやお友達には会えなくて、好きなお寿司やお蕎麦を食べられないかわりに、今まで食べたこと無いものを食べられる。そういった、できること、できないことの認識はあると思います。
ーーふたりは何と言ってます?
「父ちゃんが仕事に行かずいつでも会えるのと、いろんな幼稚園に行けるのが楽しい。お蕎麦やお寿司が長いあいだ食べれないと帰りたくなる」って(笑)。
ーー子どもと一緒だったからこその苦労もありましたよね?
怪我や風邪が多いので、病院に行く機会は多いですね。ナイトライフ(バー、クラブ)やアクティビティ(ダイビング、ラフティング、登山)や芸術観賞(オペラ、舞踊)などは制限されてしまいます。あとは、どうしても、家族で話すので現地の言葉を覚えるのが遅くなってしまいます。
でも、子連れ旅のほうが安全だと思います。4人さらうのは大変ですからね(笑)。
ーー旅中、子ども達に教えてもらったことはありますか?
やっぱり、子ども達は自然体ですよね。何にでも興味をもち疑問を抱く旺盛な好奇心があります。一日に多くのことをやろうとしない。どこにいようと、やりたいことをやって見たいものを見る。
慣れない環境で、親の僕たちが余裕を失っているときでも、トキタラはいつも楽しそうに笑っているので救われています。
◆「無事に旅を続けられたのは子どもたちのおかげ」
ーーもうすぐ旅が終わりますが、旅で得たものは?
日本で生活していたときよりも、おのずとたくさんの写真を撮っているんですよ。子ども達の成長を記録として残せて嬉しいですね。何より、タラのアトピーが治ってよかった。それだけでも旅に出た甲斐がありました。
ーー子ども達が旅を豊かにしてくれた部分があったのでは?
そうですね。各地の子育てに興味を持ったり、生活に入り込む旅ができたり。強面のお兄さんもふてぶてしいおばちゃんも怪しいおじさんも、トキタラにかかると実は良い人ばかりだった。現地の家族と家族ぐるみの付き合いができるのもならではでした。
ここまで無事に旅を続けられたのはトキタラのおかげかもしれないですね。子どものために、危ないことを避けたり、無理をしなかったり、食べものに気をつけたりすることは、親の私たちを守ることにもなりました。
ーー今回の旅をふたりがずっと覚えてくれたらいいですね。
でも、記憶に残るかどうかは僕らにとってそれほど重要ではないんです。赤の他人だった二人(僕と妻)が出会って結婚して子どもが生まれて家族になって。四人それぞれにとっての一大プロジェクトである旅の中で、長く一緒に過ごせたことに満足しています。旅を覚えていなくても、それは将来、トキタラの血となり肉となるだろうと信じているんです。
取材協力・写真:森本家
文:デスク
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