「魂の書」だそうです。この本が日本語で書かれているところがある意味、この国を象徴しています。
トルクメニスタンってご存知ですか?
こんにちは!極貧バックパッカーの植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は、現在この辺りに居ます。
僕は1月の下旬に4日間だけトルクメニスタンに滞在しました。トルクメニスタンという国、聞いた事はあってもどういう国かは知らない方が多いのではないでしょうか。僕もその一人でした。
Wikipediaによると「中央アジア南西部に位置する共和制国家。カラクム砂漠が国土の85%を占めており、国民のほとんどは南部の山沿いの都市に住んでいる。豊富な石油や天然ガスを埋蔵する。首都はアシガバート。20世紀の末から21世紀にかけて、ソ連からの独立を果たした」「トルクメニスタン民主党の事実上の一党独裁制」との事。
また上記のような独裁体制が敷かれている事から、中央アジアの北朝鮮と呼ばれています……。もの凄く気になりますね(写真はトルクメニスタンの国営放送より)。
旅行客には閉鎖的
トルクメニスタンを旅する為にはビザが必要なのですが、観光ビザを取る為にはガイドを予約しなければならず、手間もお金もかかるので、トルクメニスタンを通る旅人はたいてい、トランジットビザと呼ばれる5日間有効の短期ビザを取得します。それでも申請に55ドル(所要1週間)と入国の際に12ドルの手数料がかかります。入国日はしっかり決めなければならず、しかもたったの5日間なので、ゆっくり観光する事は出来ませんでしたが、中央アジアの北朝鮮がどんな場所なのか確かめて来ました。
中央アジアの平壌
僕が滞在したのは首都アシガバード。トルクメニスタンが北朝鮮ならアシガバードは平壌というところでしょうか。街は北部の旧市街と南部の新市街に別れ、北部にはソ連時代の整然とした建物が並んでいます。
どのアパートにも衛星放送用のアンテナが設置され、ちょっと不気味です。
対して、南部の新市街には、独立以降、近代的な建物が建てられています。旧市街に比べて出歩いている人はあまり居ませんでした。この不思議な建物。
なんと観覧車でした、外の景色があんまり楽しめない気がするのですが……。「世界一大きい“屋内”観覧車」だそうです。
夜はこれでもかというくらいに光り輝いています。でもやっぱり人通りはありません。
あまりの明るさに体内時計が狂っているのでしょうか、人間の代わりに夜でもおびただしい数のカラスだかハトだかが飛び交っています。
政府の主要施設は撮影禁止
首都と言えば政府の中心。大統領宮殿や議事堂が密集しているエリアもありますが、こちらにはおびただしい数の警官が立っていて、カメラを構えるだけでも笛を鳴らされ、写真を撮った場合は消去するように強要されます。見事な建物が多いだけに残念です。
中央アジアの金正日
この国が中央アジアの北朝鮮と呼ばれる理由になったのが故ニヤゾフ前大統領。自身をトルクメンバシュ(トルクメン人の長)と名乗り、独裁体制を敷いた事で世界から批判されました。
頂点では黄金のニヤゾフ像がマントをひるがえして輝いています。しかもこの像、常に太陽の方角を向くように24時間かけて1周するからくり付き。
奇想天外な法律
北朝鮮といえば、国民の自由が制限されているイメージが強いのですが、トルクメニスタンでは別の意味でぶっとんだ法律が存在していました。
・メロンが好き過ぎてメロンの日を制定。
・街の通りを4ケタの数字に改定して混乱を招いた。
・歌手の口パク禁止。
・オペラやバレエ、サーカスなどの上演禁止。
・地方の図書館・医療機関の閉鎖。
・金歯禁止。
・ニュースキャスターの化粧禁止。
・親の面倒は子供が見るものとして年金を廃止。
・健康促進の為、閣僚を36km走に参加させた。
・インターネット利用禁止。
・自身がガン手術を受け、禁煙を始めたので国内の煙草を禁止した。
・見苦しいから若者のヒゲは禁止。
・過去10年間に外国の大学で取得された卒業証書を無効化。
・ニヤゾフ大統領のかつらに関する報道もタブー。
どうでしょう。国民の生活を揺るがすものから、笑ってしまうほど私的な価値観によるものまで、奇想天外な法律を多数制定したニヤゾフ前大統領。国民は大いに振り回された事でしょう。(写真は4ケタの数字で表された標示)
コーランと並ぶ聖典
そんなニヤゾフ前大統領が著した本が、なんとイスラム教の教典であるコーランと同等のものとして、教育を義務付けられているそうです。ルーフナーマ(魂の書)と呼ばれ、なんと30か国語で翻訳されているのだとか。もしかしたら日本語版もあるのでは……早速探してみました。
まず向かったのはTEKE BAZAR。こちらは生活用品や食料品がメインのようです。写真を撮ろうとしたらお店のおばさんに物凄い勢いで止められました。市場にも監視カメラが設置され、撮影は禁止されているそう。市場も撮影禁止って……これもニヤゾフ氏が残した奇妙な法律の一つなのでしょうか。
そして向かったGULISTAN BAZARでようやく本屋を発見。しかし……ルーフナーマについて訊いてみましたが答えはノー。
数軒当たってみましたが、なかなか辿り着けません。ニヤゾフ大統領が亡くなってから9年、もしかしたらもう廃れてしまったのでしょうか。しかし、露天商のおじさんに尋ねたところ、売っているお店を教えてくれました。それがココ。
店員さんが奥に在庫を調べに行き、待つ事5分、戻って来た店員さんの手には一冊の分厚い本……魂の書です!しかも日本語版!
中身はざっくり言ってニヤゾフ大統領による国民への呼びかけ、自身の生い立ち、トルクメニスタン人の歴史、国民はこうあるべきだという、いわゆる哲学書で、3ページ毎に眠気が襲う内容でした。
結局のところ、トルクメニスタンは「北朝鮮」なのか?
外国人にとっては、受け入れ態勢的にも金銭的にもなかなか敷居が高いトルクメニスタン。そんな閉鎖的なお国柄と、おかしな法律を沢山制定した前大統領の存在が「中央アジアの北朝鮮」と呼ばれる要因になっていますが、当の国民はというと、まるで独裁体制下で苦しんでいる様子はなく、のほほんとしている印象を受けました。メロンの日を制定している国は他には無いと思いますが、世界にはまだまだ謎に包まれた国や、おかしな法律が存在している国が沢山あるのかも知れません。
文・写真:植竹智裕
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