小説「深夜特急」の記述をひろいながら、ゆるーく「今のマカオ」を全5回でレポートします。深夜特急を読んだことがない人も楽しめるハズ!?
デスクです。
最終回の第5弾は深夜特急、香港・マカオ編のクライマックスとも言えるリスボアカジノをご紹介します。
沢木さんが飲み込まれた恐怖の博打「大小」もやってみました…。
深夜特急でいくマカオの旅バックナンバーはこちら
「深夜特急」とは?
作家・沢木耕太郎による1970年代前半を舞台にした紀行小説であり、今なおバックパッカーの間でバイブルとして語り継がれる名作。
周囲のカジノとは一線を画す「歴史」を感じさせるリスボアカジノ
深夜特急、香港・マカオ編はそのほとんどがカジノでの博打シーンで占められています。「旅の資金が尽きてしまうかもしれない」中でのギリギリの攻防は、ギャンブルに興味のない僕でも手に汗握りました。
沢木さんが「最後の勝負」をしたのがマカオカジノの象徴と言われるリスボアカジノです。1970年創業だというので、沢木さんが訪れたのは創業から数年経った頃だったということになります。
葡京娯楽場、カジノ・リスボアは、船上カジノに比べるとはるかに近代的で、西洋風の内装をしていた。広い円形のホールにいくつもの卓があり、そこに客が群らがっていた。 とりわけ華やかに感じられるのは、ディーラーが女性だということだ。
深夜特急1 香港・マカオより引用
リスボアカジノの入り口。次々と人が吸い込まれていきます ※場内は撮影禁止
近代的なカジノが立ち並ぶ今のマカオにあって、リスボアカジノは「古き良き」を感じさせる空間でした。ガイドによると、威厳のある内装は当時からほとんど変わっていないとのこと。「大小」や「牌九」といった伝統的なギャンブルのテーブルに人垣ができ、プレイヤーの威勢のいい掛け声がホールに響いていました。
"Sic bo Table" by Wadems – Transferred from en.wikipedia to Commons.. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
マカオで大小にのめり込んだ沢木さんは一時、1200ドル(当時約36万円)をすってしまいます。しかし、「ある法則」を発見して、巻き返します。
大小とは、3個のサイコロを用いてその出目の合計数などを予想するゲーム(プレイヤーは出目を予想して上画像のどこかに賭けます)。サイコロは、お椀型の密閉された容器の中に入っており機械によりシャッフルされるのですが、追い込まれた沢木さんはなんと、その音によってサイコロの目が読めるようになるのです。
カシャ、カシャ、カシャ。 三回ともまったく同じリズムでプッシュされた。小が出るかもしれない。そう思い、眼を開き、灯りがつくのを待っていると、本当に小が出るではないか。 カシャ、カシャ、カシャーン。 三つ目が引っ掛かる。これは大なのではないだろうか。私は半信半疑ながら、十パタカを大に張ってみた。 三・四・六の大。 カシャ、カシャ、カシャーン。 これも三つ目に引っ掛かりが感じられる。五十パタカを大に賭けた。 一・五・六の大。 私は恐る恐るプッシュの音を頼りに賭けはじめた。耳を澄ませ、三つのプッシュ音がまったく同じに聞こえれば小、最後の音に微妙な変化があれば大、というわけだ。
深夜特急1 香港・マカオより引用
本当にそんなことがあるのか?
確かめるべく僕もやってみましたが、全く聞き分けられませんでした。まず、サイコロの音は思っていたより小さく、よほど近くで集中していないと聞こえないレベルです。
まぁ、1万円ぽっちでは気合いが足りないんでしょう。当時の沢木さんは、旅の資金の半分以上を大小につぎ込んでいた訳です。その崖っぷちがなし得たシックスセンスだったのでしょう。
5回に渡ってお届けしたシリーズもこれでおしまいです。
深夜特急の頃からは何もかもが変わってしまったかのように思えますが、ベラヴィスタホテルやリスボアカジノなど、当時の面影もしっかり残っている。そんなカオス感こそがマカオの魅力だと思います。
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協力:マカオ観光局
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