みなさん、こんにちは!連載・みんなのあさごはん!の水島早苗です。
私は帰国後、ウィーンスタイルのカフェを作ろうと計画中です。そこで、ウィーンでのカフェ修業の模様を4回に渡ってお届けしています。第2回はケーキ作り編です。
今年の春、カウチサーフィンで知り合ったウィーン在住のクリスティーネという女性の家で1ヶ月間、ケーキ作りを教えてもらってきました。医者のクリスティーネは、とっても美味しいケーキを作る達人でもあります。滞在のきっかけとなった出来事はこちら
この滞在中に作ったケーキは30種を超えます。その一部を紹介したいと思います!
最初の1週間はレシピには書かれていない材料の細かい選び方や、ケーキ作りの基本となる部分をみっちり学びました。写真は卵黄・卵白に分けてそれぞれ砂糖を加えて撹拌したときのものです。
平日は彼女が帰宅して晩御飯を食べる前か、食べた後にクリスティーネが見守る中、ケーキを作ることが多かったです。週末は時間もあるので、一緒に1日中ケーキを焼くこともありました。
彼女は医者という職業柄、先の予定を組むことは難しいのです。そのため、ケーキをオーブンに入れて焼いている間に、彼女のレシピ帳やケーキ専門の雑誌を広げて「明日、何作る?」と話し合うのが習慣になりました。
彼女のレシピ帳には雑誌や商品に付録で付いているレシピがアルファベット順にカテゴライズされており(写真右端)、自分なりのアレンジなどが書き込まれています。ここまでまとめるなんて、すごい!
滞在後半はウィーンを去る日が迫っている焦りもあって、調子に乗って一人で連日、何時間も作業したことがありました。そのせいなのか、人生初のぎっくり腰を経験しました。
クリスティーネの息子さんの彼女と仲良くなり、誕生日にバースデーケーキ「シュヴァルツヴェルダー・トルテ」(写真下)を焼いた翌日、くしゃみをした瞬間でした。2日間ほとんど動けませんでした…。
作る候補に挙げるとき、気をつけたことはまず、日本で入手可能な材料で作れるケーキというのが大前提です。また、高価なものだと作るのにコストがかかってしまいます。まずは材料を見て選ぶ、ということでした。
次に気をつけたのが難しくないレシピということでした。失敗するとコストがかかるし、うまくいったとしても作るのに時間がかかってしまいます。そういうわけで、レシピの工程を読んでみて、そしてクリスティーネのアドバイスを参考にしながら作るケーキを選ぶようにしていました。
一番自分の手で作ってみたかったのがオーストリアの名物・ザッハートルテ(写真はザッハートルテ発祥のホテル・ザッハーのもの)でした。まずはこのケーキに挑戦です!
"Sachertorte DSC03027" by David Monniaux – 投稿者自身による作品. Licensed under CC 表示-継承 3.0 via ウィキメディア・コモンズ.
見たことのない単位が書かれています。写真には「dag」の文字が見えます。チョコレート18dag、バター14dag・・・
私はドイツのパン屋で修行経験があり、ドイツでは本屋でもパンに限らず料理やケーキのレシピ本を読んできたけれど、こんな単位使ってたっけ・・・?一体、どれくらいの量なんだろう??
実はこの「dag」という単位、日本では「dl:デシリットル」でおなじみの「デシ」なのでした。
オーストリアはドイツ語が話されている国ですが、オーストリア独特の言い方があって、この単位もオーストリアで使われる独特の言い方のひとつなんだそうです。
10倍すればいいだけなので、チョコレート18dagは180g、バター140gということになります。難しい計算が必要じゃなくてよかった!
そもそも、レシピは、かなりおおまかです。ちゃんと翻訳できたとしても、この本だけでは絶対に私一人では作れないでしょう。
ザッハートルテのレシピにはスポンジの間に杏子ジャムを挟むということが書かれています(下写真)が、分量が書かれていません。少なすぎるとチョコレートに負けて味がしないし、多すぎると甘ったるくなってしまいます。こういった分量など、経験豊富なクリスティーネから学ぶことが本当に大きかったです。
イタリア・ミラノから女の子二人が1週間、ドイツ語研修のためクリスティーネ宅でホームステイしました。二人ともウィーンでは「ザッハートルテ」を楽しみにしているようなので、これは頑張って作るしかありません!
ザッハートルテを作る上で苦戦したのが、チョコレートを上に塗る作業でした。大きなケーキ屋ではチョコレートを何十キロも溶かした「チョコレート風呂」なるものを作っておいて、その中にケーキを浸けてコーティングすることが多いんだそうです。しかし、それは現実的ではありません。
チョコレートは厚すぎると甘ったるくなるので、ほどほどが重要です。そして、スポンジがちゃんと隠れるように全体をチョコレートで覆い、平ら、慎重に塗らなければなりません。
緊張の面持ちで塗っている私。この作業が最終的には意外と楽しいと感じるようになりました!
二人が帰る日の朝にサプライズするつもりだったのですが、作っている途中でバレてしまいました。ケーキを前に記念撮影です!
感想を聞くと、「ホテルザッハーのより美味しかった!」と嬉しい言葉をいただきました!!クリスティーネはうんうんと頷いていましたが、家庭で手作りならではの味が美味しいと感じるのは当然のことなのかもしれません。
ウィーンの古いコーヒーハウスにカフェ・ハヴェルカという人気店があります。クリスティーネが医学生の頃によく通ったコーヒーハウスでもあり、その話を聞いて、ここの名物・ブフテルンを作ってみたい!と思い、作る前に本物を食べに行ってきました。
ブフテルンはパンのようなスイーツで、私のドイツでのパン屋修行経験を活かせるチャンスです!このレシピも日本で材料は入手可能、簡単に作れるという基準をクリアしています。
店内はタイムスリップしたような落ち着いた雰囲気でした。思わず長居したくなるコーヒーハウスです。
パンのような温かい生地の中にはプラムのジャムが入っていました。このジャムを使うのがオリジナルだそうです。
本格的に作るまでレシピから見逃していたのですが、謎の単語があることに気がつきました。”Germ”と書かれた単語だったのですが、google翻訳では”胚芽”と表示されます。そしてドイツ語の辞書には書かれていません。
胚芽って何だろう・・・?チャンス!だと思ったレシピは、日本では作れないのかもしれない。
しかし、クリスティーネがこの"Germ"の実物を持ってきてくれたとき、ホッとしました。この単語の意味はドライイーストなのでした。これなら日本でも入手可能です!たまたまクリスティーネはドイツ製のドライイーストも持っていたので、並べて記念撮影。
ドイツ製にはTrockenhefeの表示があり、この名前ならgoogle翻訳でもドライイーストと表示されます。
味を忘れないうちに作ってみました。なかなかの出来です!日本だと梅のジャムで作っても面白そうだと思いました。小腹が空いた時に食べたいスイーツです。
温かいパンのような生地の中からとろりと甘酸っぱいプラムのジャムが出てきて、コーヒーだけでなく、紅茶にもよく合います!
実はクリスティーネも自分で作るのは初めてだったそうで、良い出来に大満足だったようです!
滞在終了まであと1週間になったとき、卒業制作と勝手に題して、日本風にアレンジしたザッハートルテを作ってみることにしました。
オリジナルのザッハートルテはスポンジはチョコレート味、スポンジの間に杏子のジャムが挟まれており、上にチョコレートがかかっています。
私が作ってみた日本風のザッハートルテはスポンジは抹茶味、杏子ジャムの代わりに小豆ペーストを塗り、上のトッピングのチョコレートはホワイトチョコレートを使いました。
ウィーンでは抹茶が絶大な人気を誇っており、食べてもらった人には好評でした。うまくいくかどうか本当に不安だったので、本当にホッとしました。
しかし、ホワイトチョコレートはうまくいかず…。ホワイトチョコレートの質の問題なのか、溶かし方がよくなかったのか、舌触りが良くありませんでした。帰国してからの課題です。
いよいよウィーンを去る前日、クリスティーネは”ディプロマ(卒業証明)”をプレゼントしてくれました!「サナエはベストなケーキ焼き職人」と書かれています。
以上の紹介したケーキをはじめ、学んだ半分くらいのケーキはお店でも出せるんじゃないかとイメージができるようになりました。帰国後はさらに経験を積んでいきたいと思っています。
クリスティーネは2年後定年退職を迎え、3年後に来日する予定なので、それまでには何とかお店ができる段階に持っていけるように精進していきます!!
次回は視察です。ウィーンで巡ったコーヒーハウス・カフェを紹介したいと思います。
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