バックパッカーにとって豪華クルーズなんて夢のまた夢。悔しいので、バングラデシュのロケットスチーマーと呼ばれる船で1泊2日のクルーズをしてきました。
1泊2日の船の旅
こんにちは!気ままに旅するライター植竹智裕(うえたけともひろ)です。世界一周中の僕は現在この辺りにいます。
僕は約一ヶ月間、バングラデシュを旅しました。
「バングラデシュの国土の大部分はインド亜大陸のベンガル湾沿いに形成されたデルタ地帯である。このデルタ地帯を大小の河川やカールと呼ばれる水路が網の目のように走っている。その豊富な水資源から農業に適し、かつて「黄金のベンガル」と称された豊かな地域であったが、インフラの未整備や行政の非能率から、現在はアジアの最貧国に属する」(Wikipediaより引用)
その際、気になる乗り物を見つけてしまいました。首都ダッカと地方都市を結ぶロケットスチーマーと呼ばれる外輪船です。
両サイドに水車が付いていて、その回転で推進力を得るのが特徴です。Wikipediaによれば、「初期の動力船はほとんどがこの外輪船でしたが、現在はそのほとんどがスクリューに取って代わられた」そうです。現役で水上交通を担っているのはアジアでは珍しい例です。
それにアジア最貧国の客船って……ちょっと興味があります。果たしてどんな船旅になるのでしょうか。
切符を購入
早速、始発のモレルガンジという街からロケットスチーマーに乗ってみましょう。
切符売場はこんな感じです。ベンガル語で運賃が書いてあるほかは特に目印はありませんが、
乗りたい旨を告げると中に入れてくれます。受付のおじさんは「携帯電話の本体を交換しよう!」と冗談を飛ばしてきますが悪い人ではなさそうです。笑顔で流しましょう。
1泊2日の船の旅のチケットです。モレルガンジからダッカまでは一等(エアコン付)、二等(扇風機付)、三等(甲板で雑魚寝)と乗客のスペースが分けられ、二等以上はツインベッドの個室が割り当てられます。僕が購入したのは二等船室のチケットです。お値段は2100タカ(約2948円)でした。庶民的な食事が20タカ~100タカ程度で食べられる事を考えると、かなり高価なクルーズです。
今回乗った船
乗客が自由に出入りできるのは2フロア。寝室は2階にあります。
早速、船についての情報が書かれたプレートを発見しました。僕が乗った船は1938年にインドのコルカタで製造されたLEPCHA号というそうで、もともとは水蒸気で外輪を回していましたが、1996年にディーゼルエンジンに置き換えられたそうです。1938年といえば戦前で、バングラデシュもまだ英国領インド帝国の一部だった時代です。76年経った今も現役で動いているから驚きです。
船の性能が書かれたプレートも発見しました。三等の収容可能人数が昼と夜で違うのはなぜなのでしょうか……?
二等船室はこうなっている!
べッドは硬めですがシーツも整えられていて、コンセントもあり、扇風機もあるのでなかなか快適。
いざ1泊2日のリバークルーズへ
「9時出航」と教えられましたが、船が出たのは9時30分でした。船は汽笛を鳴らして港から離岸します。
船内を探検してみた
のどかですが似たような景色が続き、早速飽きてしまったので船内を探検してみましょう。
一等船室はこのようになっています。エアコンが付いているほか、二等船室よりも広々と使えるようです。
一等船室の先(船首側)には椅子が用意され、静かに景色を楽しむ事ができます。
1階では外輪を動かす巨大なエンジンが高速回転しています。この辺りは機械が発する熱で物凄い蒸し暑さ。
船の側面を伝って船首にも行けるようです。滑りやすそうなので一瞬躊躇いましたが、若者が満面の笑みで誘ってきます……。行くしかありません。
一番風を受ける場所だからでしょうか、既に多くの人が涼みに来ていました。
ちょっと怪しい水回り
僕がこの船で一番衝撃を受けたのは水回りでした。1階にはなんと井戸が……!
皆この水で手を洗ったり口をゆすいでいますが、井戸の真下は言わずもがな……川です。間違い無く川の水を吸い上げています。
二等船室にも共同のトイレとシャワーがあります。お湯は出ません。シャワーは壊れていて、蛇口からバケツに一度水を貯めて、それを頭から浴びるしかありませんでしたが、船のどこにも貯水槽が見当たらない事を考えると、こちらも川の水なのかも知れません。
三等は戦場
船は途中の港にも停泊して乗客を集めます。出発直後はこんな感じだった船も……
夜になると足の踏み場もありません。昼と夜で収容可能人数が違うのはこういう訳だったんですね……。
二等・三等共通の食堂に行ってみた
2階の一室が食堂になっていました。特に看板も無いので仲良くなった現地人に聞くまでは存在すら知りませんでした。まずは水を張った皿が提供され、それで右手を洗います。
メニューはカレーのみでした。水を捨てた同じ皿にご飯が盛られ、カレーをかけながら右手で食べます。手を洗った皿でご飯を食べるなんてちょっと不潔な気もしますが、気にする事はありません。手を洗った水だって川の水かも知れないのですから。
景色が変わって来た!
2日目、外を見てみると無数の煙突が並ぶ地帯に突入していました。
だんだんと都会めいてきました。工場が増え、川沿いには造船所が現れました。
途中で寄港した港を繋げるとルートは以下のようになっています。
最貧国クルーズはちょっと贅沢な時間
ロケットという名称とは裏腹に、ゆっくりと川を進む船の旅でした。二等船室で静かに景色を眺める事もできて、三等エリアに出れば、そこには乗客がひしめき合っていたり、井戸が取り付けられていたりと衝撃的な光景も見る事ができます。レトロな外輪船で行く最貧国のクルーズは日本では決して味わえない経験ができる、ちょっと贅沢な時間でした。
文・写真:植竹智裕
HP:週刊!植竹智裕の気ままに世界探検ブログ
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