アルゼンチンとチリにまたがる「世界一過酷な国境」を自転車(二人乗り)で越えた男がいる。前代未聞の走行を終えて男が抱いたひとつの教訓とは……。
タンデム自転車世界一周のsawaです。今回は南米パタゴニアで体験した「世界一過酷な国境越え」をレポートします。
「世界一過酷な国境越え」の舞台はこの辺りです。南米大陸の先っぽ、パタゴニアと呼ばれる地域にあります。
大きな地図で見る
スタート地点は、チリ南部の山間にあるオヒギンス(A)という小さな街。ここから、チリとアルゼンチンの国境(B)を目指します。湖の中を通る白いラインが国境です。
大きな地図で見る
家と家の間隔が大きく、道が無駄に広い。典型的なパタゴニアの街並みです。
街には小さな商店しかありません。新鮮な野菜などは皆無で、いかに僻地かを物語っています。
翌日のフェリーのチケットを買うためにオフィスへ。国境を越える前に、まずは、湖の対岸に行く必要があるのです。
週に数本しかないフェリーということで、チケットを求める人の姿をちらほら見ることができました。このルートは日本人にこそ知名度は低いですが、パタゴニアの大自然をトレッキングしながら国境を越えることができるということで、欧米人旅行者には人気のルートです。
オフィス内に自転車を見つけました。我々以外にも国境を自転車で越えようという奇特なサイクリストがいるのでしょうか。
チケットは1人8000円と高い……。手持ちのチリのお金がありませんでしたが、アメリカドルでも支払いが出来ました。もちろんクレジットカードなど使えるハズもなく。
港というよりはただの桟橋に、すでに数人のサイクリストがスタンバイしていました。
アウストラル街道(パタゴニアを走る有名なルート)の終点を知らせる看板。チリ北部からオヒギンスまで続いてたアウストラル街道もこの湖で途絶えます。
フェリーは本来、湖を周遊するための観光船です。なのでお値段が高いのです。
なんと、船の船首が自転車で埋まっています……。何故にこんなにもサイクリストが!?確認しておきますが、これから向う国境はあくまでトレッキングルートです。
途中、一人の乗客が小型ボートで岸へ。家でもあると言うのでしょうか。
約3時間の優雅な船旅の末、チリのイミグレーション(出入国審査)のある桟橋に到着。
我らがタンデム(二人乗り)自転車も上陸。※後ろに嫁が乗ります
アルゼンチン側のイミグレーションを目指します。トレッキング道とはいえ、車が通れるくらいの幅があるので一安心と思ったら……
あまりに急な坂道に、自転車を降りてしまいました。これならトレッキングと変わりませんね。
坂を上り切ると、平坦な道になりました。歩いている人たちを一気に抜いていきます。イケイケで漕いでいると……
ここからアルゼンチンのようです。しかし、車道がぷっつり途切れています……。そう、ここから6kmが世界一過酷な国境の本領発揮だったのです……。
全く自転車に乗る余地がありません。こんなところを自転車で行こうとしたことが間違ってました……。
ようやく、アルゼンチン側のイミグレーションがあるという湖が近づいてきました。
時間がかかり過ぎたようで、対岸へのフェリーに乗り遅れてしまいました。仕方なく、今日はここに野宿して明日のフェリーを待つことにします。
(サイクリストにとって)世界一過酷な国境越えでしたが、最後はパタゴニアの象徴・フィッツロイ山の雄姿に癒されました。
翌朝、フェリーが向かえにきてくれました。今回の国境越えで得た教訓は、自転車は山道で担ぐ荷物ではなく、車道を走る乗り物だということです。
文・写真:hirokazu sawa
世界新聞の最新情報をゲット
RANKING