世界新聞ではネパール地震を受け、「ネパールのことをもっと知ってもらおう」という趣旨で、旅人によるネパールにまつわる記事を掲載しています。ネパールがどんな国で、どんな人が住んでいるのかが分からないと、支援という発想も生まれにくいと思うからです。これまでに寄せられた記事一覧はこちら
仏教の聖地で見た光景
多くの日本人にとって、ネパールはあまり馴染みのない国かもしれませんが、ネパールには仏教の聖地とされる街・ルンビニがあります。そこで、「世界平和」のために活動を続ける日本のお寺が「日本山妙法寺」です。「世界平和」と聞くと眉唾だと思う人もいるかもしれませんが、4年前、僕が仏教の聖地で見たのは、「強い想い(祈り)が起こした奇跡」とでも言うべきものでした。
まるで「仏教の万博」
ルンビニはネパールのこのあたり。インド国境に近く、今回の地震の震源からも遠く離れています。
ルンビニが仏教の聖地だとされるのは、釈迦(ブッダ)が生まれたとされる地であるからです。
ちなみに、ルンビニを航空写真で見ると計画都市だということが分かります。「釈迦の生誕地の周囲を聖地公園として整備する計画が立案され、1978年に日本の建築家丹下健三がマスタープランを作成」(Wikipedia参照)。聖地は伊達ではありません。
この計画都市の中に、ブッダ生誕のマーキング(印)があるマヤ寺や、
ブッダが悟りを開いたとされる菩提樹などがあります。
また、世界の国(日本、中国、チベットなど)からさまざまな寺院、仏塔などが建設されており、さながら「仏教の万博」です。フランス寺、オーストリア寺(写真)なんて変わり種も。
そしてこちらが、ワールドピースパゴダ(世界平和佛舎利塔)。日本山妙法寺(通称:日本寺)はこの側にあります。
旅行者も寄り付かない修業
世界一周中の僕が妙法寺を訪れたのは、泊まり込みでの「修業体験」ができると聞いたからです。ただ、その修業というのが厳しいらしく、旅行者はあまり寄り付かないという噂も。僕は結局2泊したのですが、本題に入る前に、妙法寺の方々がどんな生活を送っているのかをご紹介します。
本堂の前に「Daily Prayer」と題して書かれてあった修行者の1日のスケジュール。
午前
4:30〜本堂でお祈り+6:00〜仏塔でのお祈り or 4:30〜村を歩きながらお祈り
午後
17:00〜本堂でお祈り
・本堂でのお祈り
朝と夕方に行われます。妙法寺は日蓮宗なので、「南無妙法蓮華経」と唱えます。僕が泊った時には、お上人さんと呼ばれる偉い方(中央)、若い僧侶(左奥)、ネパール人の青年僧侶(左)、先輩修行者(右)がいました。
・うちわ太鼓
お祈りの時に欠かせない、うちわのような形をした太鼓です。叩くと「コン」といい音がします。本記事では重要な意味を持ちます。
ちなみにこのうちわ太鼓、それなりに重いので、歩きながら叩くのはなかなか大変です。
・仏塔でのお祈り
前述のワールドピースパゴダの中をお祈りしながら回ります。パゴダは巨大で、ところどころに埋め込まれている仏様の前で立ち止まってお祈りをするので、30分くらいかかります。写真の女性は一緒に参加した中国人。
・食事
こちらのリビングのような棟で食事をとります。
メニューは3日間3食すべて、雑穀(ざっこく)と野菜のぶっかけごはんでした。食べる前には必ず「食法」というお経を読みます。
慎ましすぎる生活
極めつけは、食べ終えた皿に水を少し入れて、指でよごれをこすり、それを飲みます。
「こうすれば、洗剤も使わないで済むでしょう」
「洗う水も少ない」
「これを日本全体でやればどれだけ環境にいいか」
とはお上人さんの言葉。正直、そんなこと考えたこともなかったです。
食事のあと、お上人さんが「頂き物」だといって、みんなにお菓子(日本でもよく見かける小袋に入ったようなケーキ)を1つづつ配ってくれました。みんながそれを噛み締めて食べる様子から、これは特別なことなんだと分かりました。
ここではすべてにおいて節制ということが徹底されています(もちろんタバコもお酒も禁止)。「こんな生活をしているお坊さんが本当にいるんだ…」と衝撃を受けました。そして、彼らがこのような生活を送る理由が、村歩きで明らかになります。
こだまする「ナム・ミョー・ホー・レン・ゲー・キョー」
朝、真っ暗なうちからうちわ太鼓を持って外へ出ます。ほとんど視界が効かず、道も荒れているので、うちわ太鼓を叩く余裕すらないほどでした。ついて行くだけで精一杯…。
うちわ太鼓を叩きながら集落に入っていきます。すると…
道ばたに子供達が出てきていました。
子供達は我々を待っていたのです。お上人さんは慣れた手つきで、うちわ太鼓と棒を子供達に渡します。
そしてそれを叩かせてあげます。うちわ太鼓を叩く輪が出来ます。
驚くことに、「ナム・ミョー・ホー・レン・ゲー・キョー」と言いながら叩く子どももいました。辺りに太鼓の音と「ナム・ミョー・ホー・レン・ゲー・キョー」がこだまします。僕はきつねにつままれたような気分でその光景を見ていました。
うちわ太鼓には現地語で「南無妙法蓮華経」。
家から手を伸ばす子には歩み寄って叩かせてあげます。
叩くのに飽き足らず、我々についてくる子もいました。
朝のお祈りは、現地の生活に溶け込んでいるようでした。みんな太鼓の音を心待ちにしているのです。
うちわ太鼓は「平和の音」
「うちわ太鼓はね、平和の音なんですよ」(お上人さん)。
日本山妙法寺は世界二十箇所くらいにあって、「世界各地で平和運動を展開していることで知られる(Wikipediaより引用)」。ここ、ルンビニでも十年以上うちわ太鼓を叩き続けてきたそうです。村歩きで見た光景はその賜物でしょう。
「言葉は通じないけど、太鼓の音はみんなわかるでしょう」
とはいえ、異国の地で太鼓の音なんていう曖昧なものに世界平和を託すなんて…。どれほどの信念がいることなのだろうと思いました。
お上人さんの「夢の話」
ある晩、皿の水をすすりながらお上人さんがおっしゃった「夢の話」が思い出されます。
「私たちはね、貧乏な生活をしてるでしょ。でもね、全然つらくないの」
「夢があるからね」
「僕の夢はね、世界平和です」
「夢が世界平和」なんて初めて聞きました。でも、お上人さんのキラキラした目を見て、このお方は本気なんだと思いました。
うちわ太鼓の音が聞こえたら
時事通信の報道によると、幸い、ルンビニは地震の被害が少なかったようです。
ネパール大地震で、仏教の開祖である釈迦(しゃか)生誕の地とされるネパール南部ルンビニの遺跡には目立った被害がなかったことが29日、分かった。
お上人さんをはじめ、妙法寺の方々は、今も祈っているはずです。地震で被害に遭ったネパール人を想い、心を痛めながら、うちわ太鼓を叩いているはずです。
あなたも太鼓の音が聞こえたら、募金をお願いします。
まずネパール国内に備蓄している物資を使い、仮設避難所に集まっている人々のための給水タンク、経口補水塩、亜鉛の錠剤、救護施設用のテントなどを提供しています。
本募金では皆さまの寄付額と同額を、Yahoo! JAPANからも寄付させていただきます。
みなさまの善意が2倍になる仕組みです。
ネパール赤十字社と国際赤十字・赤新月社連盟が実施する救援活動を支援するため、日本赤十字社は下記のとおり救援金(救援金名称「2015年ネパール地震救援金」)を受け付けます。
世界新聞では「think of NEPAL」と題してネパールのことを知ってもらう記事を掲載しています。
・「いつか日本へ…」。ホテルの玄関に泊まりながら勉強し、夢を叶えたネパール人の話
・震災前にカトマンズで出会った人々の安否と、彼らのこれからを想う
・ネパール地震で亡くなったもうひとつの命。山で売買される「シェルパ」を知ってますか?
・ネパールと日本は「遠い国」なのか? 4年前、カトマンズで食べた「醤油ラーメン」の話
・過酷な環境で美しく生きる人々がいる。震災前に出会った6人のネパール人を想う
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