おばんどーです。2012年の4月、僕は東チベットの稲城県という場所であるお婆ちゃんに出会い、写真を撮らせてもらいました。そして今回(2013年の4月)、現像したお婆ちゃんの写真を持って、本人に渡しに行ってみることにしました。
僕はこれまで、世界中で人々の写真を撮ってきました。しかし、僕はいつも自分の好きなように写真を撮っては去って行くだけでした。「心よく撮らせてくれた人に恩返しができないか?」「撮った写真を渡したら喜んでくれるかな?」そんな想いがあった僕は今回の企画を実行することにしたのです。
稲城県は中国四川省カンゼ・チベット族自治州の南端に位置する県です。海抜は2000mから最高地点で6032mに達する、高山と峡谷の多い地形です。県内には亞丁自然保護区があり、希少な植物相や動物相が保たれ、また雪山を見ることができる観光地でもあります。wikipediaより引用
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2013年の4月、現像したお婆ちゃんの写真を手に、再び稲城県を訪れました。標高は約3800m、日本の富士山とほぼ同じ標高です。
街の中心を走る道路は整備がされています。街並みはチベットではなく中国を思わせますが、歩いているのはほぼチベット人。
街の中心にある公園には、亜丁自然保護区をモチーフにしたモニュメントがあります。夕刻には多くのチベット人が集まっては踊る光景を目にします。
信仰心が強いチベット人は、朝夕や仕事の合間にここへやってきては、仏塔の周りを右回りで(礼拝の対象を常に右に見ながら巡るのがチベット仏教の礼法)歩き続けています。仏塔の周りで写真を撮っていると「あなたも私たちの様に歩きなさい」と手を引いて歩こうとします。
仏塔の周辺は見渡す限りの荒野。ちょうど1年前、ここでお婆ちゃんと出会い、写真を撮らせてもらったのです。
あれは、荒野を遥か彼方のゴンパ(チベットの寺)を目指して歩いていたとき……
ある家族に出会いました。
二人の孫を見つめる優しいまなざしが印象的で、写真を撮らせてもらいました。
そんなお婆ちゃんが住む荒野に戻って来ることができました。再会できることを信じて、僕は歩き出しました。
とはいえ、どこに彼女達の家があるのか記憶は定かではありません。その上、このあたりのチベット人は遊牧して住んでいるようなので、会えるかどうかますます不安です。
先ほどの仏塔と同じように、人々が建物の周りをグルグル回っています。どうやらここは小さなゴンパ(チベットの寺)のようです。
僕もグルグル歩き回ったところ、一緒に歩けば歩くほどみんな笑顔になります。
仲良くなったところでお婆ちゃんの写真を見せてみます。すると、ものすごい勢いで囲まれました。人気者になった気分!
「この人ってあそこの○○さんじゃない?」みたいな感じで方角を指差してくれたりします。その反応から、これだけ広い場所に住んでいながら、住人同士は顔見知り以上の関係で繋がっているようです。
運良く、荒野を走るトラクターをヒッチハイク。おじさんが近くまで送ってくれるそうです。
乗ったのもつかの間、降ろされた場所は川の側でした。そして、目指す場所は川の向こう側……。
くぅ〜!骨の髄まで一気に冷えるようです。チベットの4月はまだまだ寒いのです。
当てもなく道らしいところを淡々と歩き続けます。標高が高いので、少しの勾配でも息切れしてしまいます。
道中にはいくつものマニ塚(お経が彫刻された石)が乱立しています。
「タシデレー!」 (※チベット語でこんにちは)
淡々と歩いていると一人の女性が声をかけてくれました。彼女曰く、お婆ちゃんはこの辺りにいるそうです。
会う人、会う人に声をかけて尋ねると、彼らはとても親切に教えてくれます。
やはりどの人に聞いても、顔見知りのようです。お婆ちゃんはすぐ近くで作業をしているようです。
言われるがままに荒野をひたすら歩いていきます。こんな場所で何をしてるんでしょうね、お婆ちゃんは。
出会った集団に写真を見せてみたところ、今まで以上の盛り上がり!
そして……
写真を渡すと、お婆ちゃんは泣き出していまいました。僕が去年来たことを覚えていてくれたようで、そのことを身振り手振りで周りの人たちに伝えてくれました。ありがとう、ありがとうと僕に言いました。
そしてお婆ちゃんとみんなで記念撮影!こんな大勢と仲良くなっちゃいました。
短い時間でしたが、お互い一生懸命に何かを伝えようとボディーランゲージを交わしました。僕は「またきてちょうだいね!」と言ってくれたようで嬉しかった。僻地までやってきたかいがありました。
再会からつかの間、お別れを告げて歩き始めると、見えなくなるまで手を振って僕を見送ってくれました。
再び街を目指して歩きながら、この広大な荒野で僕とチベット人の友情が結ばれたような気がしました。そして、あの集合写真を渡すために、僕はまたこの地に戻ってくるでしょう。
文・写真:おばんどー
おばんどー
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