神父がキレてしまってるイスラエルのお正月(エルサレム・聖墳墓教会)

2018.01.21 19:41 
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シリーズ「エルサレムで初詣」第2回は、キリスト教最大の聖地「聖墳墓教会」へ。キリストの処刑・埋葬・復活の全てが起こった伝説の現場では、一体何が怒っているのか。

 

あけましておめでとうございます、イスラエル・テルアビブ在住のがぅちゃんです。

連載「ニュースが教えてくれないイスラエル」でお送りします。

2018年1月1日の元日に、初詣としてエルサレムを代表する聖地3つを巡ってきました。

 

「エルサレムで初詣」全3回の流れ

第1回「旧市街」編 
第2回「聖墳墓教会」編
第3回「嘆きの壁」編

 

エルサレムの概要

 

エルサレムまたはイェルサレム(Jerusalem)は、イスラエル東部・パレスチナ自治政府にある都市

イスラエルはエルサレムが「首都」であると宣言しているが、国際連合など国際社会はこれを認めていない。

イスラエルと国交を持つ諸国もエルサレムでなく、地中海沿岸にある西部のテルアビブに大使館や領事館を置くなどし、イスラエルの首都はテルアビブであるとしている。

旧市街はユダヤ教・イスラム教・キリスト教の聖地であり、嘆きの壁や聖墳墓教会、岩のドームといった各宗教縁の施設を訪れる人々が絶えない。

Wikipedia「エルサレム」参照。

 

エルサレムの初詣ルートのおさらい

「旧市街(ヤッフォ門)」→「聖墳墓教会」→「嘆きの壁」という王道ルートで初詣しました。

 

第1回では聖墳墓教会に無事たどり着いたものの、ある違和感に気づきます。

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元日じゃない聖墳墓教会(この写真)と比べると、人が少なすぎたのです。お正月なのに…

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聖墳墓教会が閉まってる…というわけでもなさそうだったので、いざ中へ。

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第2回「聖墳墓教会」編では、元日の違和感の謎に迫りつつ、聖墳墓教会の内部を紹介します!

 

そもそも聖墳墓教会って何がすごいの?

誰もが一度は聞いたことがあるであろうキリスト伝説の舞台とも言えるのが聖墳墓教会です。

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せっかくなのでちょっと補足します!

 

聖墳墓教会(せいふんぼきょうかい)は、エルサレム旧市街(東エルサレム)にあるキリストの墓とされる場所に建つ教会。ゴルゴタの丘はこの場所にあったとされる。

(※ゴルゴタの丘=新約聖書においてイエス・キリストが十字架に磔にされたとされる丘)

聖墳墓教会に入ってすぐの場所は、イエス・キリストの身体が埋葬のために準備された場所であると信じられている石物である。

中央のドームにイエスが埋葬され3日後に復活を遂げたとされる「石墓」が存在する

現在の聖墳墓教会は、カトリック教会、東方正教会、アルメニア使徒教会、コプト正教会、シリア正教会などの複数教派による共同管理となっており、一日中それぞれ何らかの教派によるミサ・聖体礼儀などの公祈祷が行われている。

Wikipedia「聖墳墓教会」「ゴルゴタの丘」参照。

 

聖墳墓教会の中には聖なるスポットがいくつもあり、キリストを信仰する全ての人にとって重要な総合施設といった雰囲気です。

宗教のラウンドワン……とでもいいましょうか。笑(へんな例えですいません)

ボーリング!カラオケ!フットサル!…と主役級のアクティビティがゴロゴロあるような感じです。

 

ちなみに外観のこの部分には…

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このようにハシゴかけられています。

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実はこのハシゴ、キリストとは直接関係ないものの、聖墳墓教会の性質をよく表しています。

 

不動の梯子(Immovable Ladder) とは、聖墳墓教会の窓にかけられた木製の梯子である。(聖墳墓教会では様々なキリスト教派が激しく管理権を争っていた)

1852年にオスマントルコが下した勅令により、教派ごとに礼拝できる曜日や掃除できる場所、用具を置いてよい位置などが厳密に定められ、「変更」は認められなくなった

その原則はこの梯子にもおよび、事実上どの教派の聖職者も動かすことができなかった。

木の梯子が朽ちるとまた新たな梯子が代わりにこの場所に置かれ、不動の梯子は150年以上にわたってその現状を維持した。

Wikipedia「不動の梯子」参照。

 

このように複雑なスポットなので、キリスト伝説の舞台という不動のコンセプトを軸に巡ることにしました。

「キリストの磔刑」→「キリスト埋葬」→「キリスト復活」という流れで紹介します。

 

いざ聖墳墓教会の内部へ!

まずは入ってスグ右へ。 

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放置されたベビーカーをスルーし、

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いかにも怪しい入り口から階段を登ります。

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観光客が列を成すには狭すぎる階段でした…。

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キリストの磔刑の現場へ(通称:ゴルゴダのチャペル)

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(磔刑図/アンドレア・マンテーニャ)

 

キリストの磔刑(キリストのたっけい)は、キリスト教の聖典である新約聖書の四福音書に書かれているエピソードの一つ。ナザレのイエスがエルサレム神殿を頂点とするユダヤ教体制を批判したため、死刑の権限のないユダヤ人の指導者たちによって、その権限のある支配者ローマ帝国へ反逆者として渡され、公開処刑の死刑である十字架に磔(はりつけ)になって処刑されたというものである。Wikipedia「キリストの磔刑」より。

 

階段を上るキリストの磔刑を祀る空間が現れます。観光ツアーの団体が目立ちます。

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天井から壁まで装飾がびっしり。

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中東というか西洋というか、すごく複雑な趣を感じます。

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そんな空間の奥にあるのが…

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キリストが磔刑にされたゴルゴダの丘に建てられた「磔刑の祭壇」です。

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ちなみにキリストの頭上にある「INRI(※)」という文字は…

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(※IESUS NAZARENUS REX IUDAEORUM)

 

「ユダヤ人の王ナザレのイエス」と訳されます。

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意味がわかると怖い「ゴルゴダ」という言葉

実はこの部分は…

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この部分(=ゴルゴダの丘※)だとされています。

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(※ゴルゴダの丘の位置には諸説あります)

 

「ゴルゴダ」は髑髏を意味し、元々はアダムとイブの「アダムの墓」があった場所とされています。

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つまり、このゴルゴダのチャペルは「髑髏の丘の処刑の風景」という見方もできるわけです。

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エピソードのフルコース。笑 さっそく座学が長くなってしまいましたね…。

 

神聖な場でツアー団体がやらかす

磔刑の祭壇の中央で、観光ツアーの団体がなにやらもぞもぞしています。

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祠のような部分に入っては出てを繰り返しています。

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実は祠の中には穴があり、ゴルゴダの丘に触ることができます。(聖墳墓教会のメインイベントの1つ)

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しかしあまりモタモタしていると…

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ギリシャ正教の神父さん(監視役)に割と本気で怒られます。

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神父さんはこうして部屋の隅からしっかり監視しています。なんだか美術館に来たような気分でした…。

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では次に「キリスト埋葬」のスポットへ…!

 

キリストの死体を埋葬処理した場所へ(通称:終油の石)

実は聖墳墓教会に入ってすぐのところにあるので、一番目立っているスポットです。

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場所が場所だけに、日によっては軽いフェス状態…。(写真は過去の様子)

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しかし元日の終油の石(※)は、意外と落ち着いた雰囲気でした。

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(※一般的には英語で「Stone of Anointing」と呼ばれています)

 

まさにここで、死んだキリストが埋葬の準備をされたと言われています。

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人種も様々な老若男女の人たちが、入れ替わり立ち替わり祈っていました。

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ノリで触ってるだけのように見える人もいましたが。笑

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終油の石の秘密

終油の石の背後の壁画には、ここでキリストが埋葬された様子が描かれています。

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しかし現在の石板は、1810年の再建築で復元したレプリカだそうです。

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僕はてっきり、この石の上に直接キリストが寝かされたものだと思い込んでいました。

この位置が重要なだけで石自体は無関係だったんですね…。

 

死んだキリストが復活した場所へ(通称:キリストの墓)

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(復活/シモン・チェホヴィッチ)

 

キリストの墓(キリストのはか)は、キリスト教において、イエス・キリストが埋葬された後に復活したと信じられている墳墓。一般にキリスト教徒に信じられているところでは、キリストの墓の場所はエルサレムの「聖墳墓教会」あるいは「園の墓」である。しかし、異説も存在する。Wikipedia「キリストの墓」参照。

 

終油の石の奥へ進むと、建物を囲む行列に出くわします。

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行列の先には「キリストの墓(※)」への出入り口があります。

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(※英語名は「Edicule of the Tomb」。実際の墓の位置については諸説あります)

 

ちなみにここも、ギリシャ正教の神父が入場を仕切っています。

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神父さんはイライラしがち

時折、行列を無視した信者らしき人が、お金のようなものを渡しにやってきます。

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神父さんはぶっきらぼうにそれを受け取っていたりと、かなり不機嫌な様子でした。

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時に神父さん、行列に「It's full! Make space!(場所あけろ!)」と英語で怒鳴る時もありました。

正直、神父と言うよりクラブのバウンサーに近い印象です。笑

まあでも、我を忘れた熱心な信者が毎日押しかける状況を考えると、仕方ないことなのかもしれません…。

 

いよいよキリストの墓へ

とりあえず神父さんに怒られないように、大人しく並ぶことに。

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周りには聖なる言葉を唱え出す集団も。いよいよ感がすごいです。

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そしていよいよ自分の番がやってきます。

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いよいよというか、神父さんに近づいていることに緊張します。笑

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気まずいので空を見上げて気を紛らわしたり。(お仏壇みたい…)

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そんなこんなでいざ中へ!

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キリストの墓の内部

内部はこんな感じです。合計2つの部屋があり、この奥の部屋にキリスト墓があります。

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ちなみにこの岩、大昔に墓の入り口を隠す役割を果たしていたそうです。

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では本当にいよいよキリストの墓へ。

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キリストの墓

まず視界に入ってくるのが頭上のランプ。(43個あるそうです)

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そして目の前には複数の祭壇。

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こちらは復活したキリストを表現した祭壇(※)だそうです。

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(※キリストの墓はキリストが生き返った場所であるとも考えられています)

 

ズームすると元気なキリストの姿が。

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二人掛けソファーくらいのスペースのこの部分でキリストの遺体が寝かされた(※)と言われています。

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(※現在は大理石でカバーされています)

 

キリストの墓で得た教訓

キリストの墓のある部屋は、5〜6人で身動きが取れなくなるくらい狭いです。(写真はflickrより)

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Photo credit: George Martell/TheGoodCatholicLife.com via flickr

 

しかも出入り口は1つしかありません。(3つあった時代もあるそうですが)

そんな部屋を、聖墳墓教会を訪れるほとんどの人が目指すわけです。

あまりのせわしなさで、油断すると本当に写真が撮れません…。

キリストの墓で写真を撮るなら、GoPro必須です。

 

こうして若干の後悔を胸に、キリストの墓を後にしました…。

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聖墳墓教会を去るときに気づいた異変

聖墳墓教会を去ろうとしていた時のことです。

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なんとなく入り口の柱を眺めていたところ

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大量の十字架の落書きに気づきました。(さすがは聖地ですね)

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もう一方の柱をよく見てみると…

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割れ目に丁寧に折られた紙がたくさん。

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この紙、実はとんでもない代物だったことに後で気づきます…。

 

聖墳墓教会で初詣してわかったこと

まず、神父さんを怒らせずにGoProで巡回できれば、聖墳墓教会の観光はきっとうまくいきます。

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あと、元日なのに人がいない…と最初は驚いていましたが、これには理由があります。

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単純に「この日はイスラエルでは元日ではなかった」というのが答えです。

実はイスラエルが採用しているのはユダヤ暦で、西暦で新年を祝いません。(しかも新年の日は毎年変わる)

2018年1月1日の月曜日は、ユダヤ暦で5778年の普通の月曜日。

つまりド平日の雨の朝。

そりゃもちろん人が少ないわけです。笑

 

次回、ユダヤ教最大の聖地「嘆きの壁」へ…!

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聖墳墓教会で元日の謎も解けたところで、第2回のおひらきとさせていただきます。

嘆きの壁では、日本の神社仏閣を彷彿とさせる目からウロコな習慣に遭遇します…。

 

第3回の記事はこちら >> トランプも安倍さんも触れたエルサレムの嘆きの壁で本当に触れるべき「紙くず」の話

 

聖墳墓教会への行き方

 

旧市街(ヤッフォ門)から徒歩5分

営業時間

4〜9月(サマータイム)
日曜:5時〜20時
月〜土曜:5〜21時

10〜3月(ウィンタータイム)
日曜:4〜19時
月〜土曜:4〜19時

 


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がぅちゃん
イスラエル・テルアビブ在住のネイティブ京都人。京都市立芸術大学卒業後、米国人の同性パートナーとベルリンに移住し、ライターとして活動を開始。世界新聞2代目編集長。日本、イギリス、カナダ、ドイツでの生活経験がある。▶︎ブログ ▶︎youtube ▶︎twitter

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