「麦のワイン」や「ビールの中のシャンパン」とも称される、ベルギー独特のランビックビール。 そんなランビックビールを製造する、ベルギーのカンティヨン醸造所を見学してきました。(レアなランビックビールの試飲レポートも!)
みなさんごぶさたしてます、飲んだくれ担当三矢です。
世界の酒場を紹介する連載「世界酒場放浪記」、前回はオススメ海外ビールを10種類紹介しましたが、今回はその中の一つとして紹介した「ランビック・ビール」を作っているベルギーのカンティヨン醸造所の見学記です。
(世界の酒場を紹介する連載「世界酒場放浪記」のバックナンバーはこちら)
何も知らないで飲むとビールと言うよりシャンパンを想像する人が多いかもしれないくらい酸味が強いビールで、「麦のワイン」や「ビールの中のシャンパン」とも称されます。
ランビックビールには、さくらんぼやフランボワーズを漬け込んだフルーツ・ランビックというスタイルもあり、ビールの苦さが苦手な方にもオススメです。
ランビック・ビールとは、ベルギー・ブリュッセル南西に位置するパヨッテンラント地域でのみ醸造される、特色のあるビールのスタイル。慎重に培養した醸造用酵母を使って発酵させるエールやラガーの製法と異なり、ブリュッセルを縦断するゼンネの谷に自然に生息すると言われている野生酵母とバクテリアにさらされることで起こる自然発酵で造られる。この珍しい工程により、ドライで、ワインやシードルのようなわずかな酸味という特有のフレーバーがビールに加わる。Wikipedia「ランビック」参照。
ベルギーのカンティヨン醸造所はそんなランビックビールを作る数少ない醸造所です。そしてなんとセルフツアーで見学することができます!
カンティヨン醸造所(Cantillon Brewery-Musée Bruxellois de la Gueuze)
住所:Rue Gheude 56
営業時間:平日の9:00~17:00、土曜日の10:00~17:00
料金:大人7ユーロ(試飲2杯付)、12~18歳と60歳以上は6ユーロ
電話番号:02-521-4928アクセス:地下鉄Clemenceauから徒歩。
7ユーロ(約794円)の料金を払い、最初にスタッフから簡単な説明を受けパンフレットをもらいます。
…いよいよカンティヨン醸造所の見学スタートです!
最初の部屋はマッシング槽のある場所です。機械で粉砕したビールの原料をここにあるマッシング槽に投入します。ここにお湯を加えて温度を上げることで麦汁が出来上がります。
階段を上って2階に進んだ次の部屋は、煮沸釜と粉砕機がある場所です。最初の部屋で作られた麦汁がポンプで汲み上げられてきます。ここで麦汁を煮沸して殺菌します。
ここでランビックならではの特徴が一つ…
煮沸を始める前に麦汁に「放置した古いホップ」を加えます(ホップにはビールに苦みを付け、保存性を高める効果があります)。カンティヨンでは、普通のビールの2~3倍ものホップを使用しているのですが、それだけ大量のホップを入れても苦くなりすぎないように、「放置した古いホップ」を使っているそうです。
お次は穀物倉庫。風通しのいい屋根裏はビールの原材料を保存するのにもってこい。それにしてももの凄い量の原材料!ちなみに穀物倉庫に原材料が積み上げられているのは10月中旬から4月初旬にかけてのみとのことらしいです。
この建物の中にはランビックビール醸造で最も大事な冷却遭があります。心して階段を上ります。
煮沸しホップを取り除いた麦汁がここに流し込まれます。夜の冷気で自然の力で冷却します。夏場は気温が高くて冷却できないのでカンティヨンでは秋から春にかけてしかビールを醸造していません。
ランビックビールは自然発酵なので野生酵母の力を借ります。この冷却層に入れられた殺菌済みの麦汁と、風によって運ばれてきた野生の酵母が出会います。それゆえ、パンフレットには「この屋根裏は醸造家にとっては、独特の微生物群が生きる聖域と見なされている」と貰ったパンフレットには記されていました。
一晩冷却した麦汁は穀物倉庫の隅にあるステンレス製の容器に移さ、温度と糖分の量が調整されます。
お次は樽の貯蔵室。ランビックビールは最低1年以上木樽の中で熟成させます。なんだかワインみたいですね。
樽貯蔵室の隣は機械が並んだお部屋。このレトロな機械は酵母をろ過する機械。
ランビックビールには熟成年度の違う複数のランビックをブレンドしたグーズ・ランビックや、2年物のランビックに、サクランボやフランボワーズを漬け込んだフルーツ・ランビックなど様々なバリエーションがあります。
なぜブレンドする必要があるのか?それは自然の力で醸造されたランビックは味にばらつきが出る可能性があります。複数のランビックをブレンドすることで、ビールの質が一定になるようにしているんですね。
ここで自然発酵のランビックビールを醸造する醸造所ならではの光景を一つ見つけました!それがこれです。蜘蛛の巣がかかっているのがわかるでしょうか?
日本だったらすぐさま炎上しそうですがこれには訳があるんです。ビールが発酵したり、フルーツランビックの果実の匂いに誘われてこの醸造所には虫が集まってきます。しかし自然の酵母を殺してしうので殺虫剤は使えません。だから蜘蛛に虫を退治してもらうようになったんですね。
熟成され、ブレンドされたランビックビールはいよいよ瓶詰の時を迎えます。そして瓶詰が終わるとベルトコンベヤーで貯蔵庫に運ばれていきます。この先の貯蔵庫がなんとも圧巻で…
見てください…このずらりと並んだ瓶の量!上から下まで瓶!瓶!瓶!
瓶詰されたランビックはここに保存され、瓶内で再発酵させるため最低6か月は保存しないといけません。そのため全貯蔵庫で平均8万本ものランビックのビンが貯蔵庫に置かれているそうです。80,000本!!
さてさて、お待ちかねの試飲タイムです。醸造過程を見てくるともう飲みたくて飲みたくて我慢できなくなってしまいます。安心してください、カンティヨン醸造所では、見学の後ランビックビールを試飲することができます。しかも2杯!
ランビックの説明も終わったことですし、いよいよ試飲です。試飲は1杯目はランビック(1年物)、2杯目はグーズ・ランビックかフルーツ・ランビックから好きな方を選べるようになっています。
気になるランビックビールの味ですが、炭酸はありますが弱く、酸味が強いのでビールと言うよりスパークリング・ワインに近い印象を受けます。
さすが「ビールの中のシャンパン」。
試飲の一杯目は1年物のランビックです。
これは貴重ですよ!ランビックは基本的にブレンドして出荷されていきます。しかしここではブレンド前のランビックを飲むことができるのです!シャンパンのような香りがし味は酸味が際立つ、苦味の強いシャンパンのような味。多少エグミがあります。全体としてエグミと苦味が強く、これだけで飲むのは結構辛く感じました。
フルーツ・ランビックとすごく悩んだ結果、せっかくなのでランビック本来の味わいをもっと堪能したい、とグーズ・ランビックを選びました。
柑橘系のような香りが加わり華やかになり、味は強い酸味の奥にほのかな甘みとホップの苦味が潜んでいます。味と香りに深みが増しビールとしての完成度がより高まっています!
ちなみに、飲み足りない人や、別のランビックビーるを飲みたい方は、追加料金を払えばここで飲めます。一杯大体3ユーロ。
カンティヨン醸造所で作られるランビックビールは、知らずに飲むとびっくりすると思います。酸味があまりに強烈なのでビールだと思わないか、腐ってると思ってしまうでしょう。
でも、数千年前に飲まれていたビールもきっとこんな味だったんだろうなと想像しながら飲むと、ビールの歴史やそのバリエーションの豊富さに驚かされます。
日本でもベルギービールを扱うビアバーや、ビールの種類が豊富な酒屋さんでランビックビールを味わえるので興味が湧いたらぜひ飲んでみてください。びっくりしますよ!
(参考:【ベルギー】ランビックビールで有名なカンティヨン醸造所を見学してきた | my pace, my life)
世界新聞の最新情報をゲット
RANKING