シリーズ「スペイン巡礼」第4回。ゴール地点(800km)からさらに100km。巡礼者の間で真のゴールと呼ばれる海の町、フィニステレ。旅の終わりと始まりに、何かつかめた気がしたお話です。
※サザエさん症候群(サザエさんしょうこうぐん)とは、日曜日の夕方から深夜、「翌日からまた通学・仕事をしなければならない」という現実に直面して憂鬱になり、体調不良や倦怠感を訴える症状の俗称。Wikipedia「サザエさん症候群」参照。
スペイン巡礼の本当のゴール「フィニステレ」
こんにちは。ビーチよりも森派な旅人カイです。
過去3回に渡って紹介したスペイン巡礼ですが、ゴールであるサンティアゴ・デ・コンポステーラからさらに3日かけ、100km歩いてたどり着くフィニステレ。
今回は、フィニステレが「世界の終わり」と呼ばれる理由と、その背景にある巡礼者たちのある想いをご紹介したいと思います。
スペイン巡礼についておさらい
サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路(サンティアゴ・デ・コンポステーラのじゅんれいろ)は、キリスト教の聖地であるスペイン、ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路。おもにフランス各地からピレネー山脈を経由しスペイン北部を通る道を指す。Wikipedia「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」より。
スペイン巡礼はカミーノとも呼ばれます。四国のお遍路のスペイン版のようなものです。
ちなみに四国のお遍路はここでは「ジャパニーズ・カミーノ」と呼ばれています。
スペイン巡礼の過去記事はこちら
第1回 >> 800km歩くスペイン巡礼で絶対にスルーしてはいけない7つのスポット
ゴールから、さらに100km先へ
「世界の終わり」と呼ばれるフィニステレがあるのは、サンティアゴ・デ・コンポステーラからさらに100km西へ歩いた場所。
サンティアゴ・デ・コンポステーラからはバスも通っていて、約1時間半程度で到着できます。
筆者は徒歩で3日間かけて歩きましたが、スペイン巡礼のゴールはあくまでサンティアゴなので、バスで移動する巡礼者も多いです。
フィニステレへは深い森と山を越えていきます。
サンティアゴまでの道と同様に、途中の町にはスペイン巡礼者用の宿(アルベルゲ)があり、格安で滞在することができます。
森を抜け、強い日差しの中で坂道を登り、遠く海を望んだ時の感動といったら言葉では言い表せません。
一番ポピュラーなフランス人の道を歩いてきた巡礼者にとって一ヶ月ぶりの海。
多くの巡礼者が歩みを止めてしばし感慨深げに景色を楽しんでいました。
フィニステレはスペイン巡礼者のリゾート
フィニステレの町は多くのヨットが停泊していて、さながらリゾートのよう。
ビーチや観光客用のレストランもたくさんあって、「最初で最期のリアルバカンスだ!」といって巡礼者同士で互いの労を労いながら思いっきりバカンスしました。
フィニステレには、大小様々なコバルトブルーのビーチがあり、まさにパラダイス。
一ヶ月間、歩くことに集中していた巡礼者たち。最初で最期の楽園で、旅の疲れを心身ともに癒していました。
スペイン巡礼の真のゴール「世界の終わり」へ
フィニステレの中心地から3kmほど歩いた場所に、大西洋につき出た岬があります。町中心部からは歩いて30分くらい。
「0km」の巡礼路表示があり、巡礼者にとって非常に重要な場所です。
夕方になると、その日到着した巡礼者たちが続々と岬に集まってきます。オレンジ色に染まる海辺を、興奮した巡礼者たちの声が包んでいきます。
ちなみに、スペイン巡礼者が貝殻を身につける習慣もこのフィニステレが所以と言われています。
ある巡礼者がフィニステレまでたどり着き、歩ききった印としてフィニステレで拾った貝を証拠としてつけていたことが所以だそうです。
フィニステレが「世界の終わり」と呼ばれる理由
フィニステレは、今はサンティアゴに祀られている聖ヤコブの遺骸がエルサレムから流れ着いた場所と言われています。
フィニステレで陸地が途絶え、海がはじまり、黄泉の国へと続いていると考えられてきました。
それがこのフィニステレが「世界の終わり」と呼ばれるようになった一つの理由。
巡礼の目的地はサンティアゴ・デ・コンポステーラですが、スペイン巡礼の本当の終着地点はフィニステレである…というのが巡礼者の中での共通認識。
巡礼者たちは、巡礼をはじめたとき「こんな長い距離を歩き切れるだろうか・・・」と思います。
歩き始めて日が経っても「歩くのをやめたい・・・」と何度も思います。
カミーノはそれほど、物理的にも精神的にも長い道のりなのです。
そして気づく旅の核心
そして長い道を歩ききった先にみえるのが、続く道のない大海。
これまで一つの道を辿って歩いてきた巡礼者たちにとってそれは旅の終わりを意味します。
旅の終わりはすなわち、自分の本当の世界(リアルライフ)に戻らなければならないということ。
それはときに歩き続けるよりも困難で恐怖を伴うことでもあります。
巡礼者たちの達成感、旅の終わり、自分の人生に戻らなければいけないという決心。
旅の終わりの本当の意味
そういった旅人の様々な感情が、フィニステレを「世界の終わり」と呼び、特別視する所以となっているのです。
フィニステレでは以前、巡礼で使っていたTシャツや靴を燃やすのが伝統としてあったそう。(今は火事の危険があるため禁止されています)
それはまさに、巡礼という旅との決別を意味し、自分の人生を再度歩み始める決心をゆるぎないものとするため。
「世界の終わり」は同時に「新たなはじまりの場所」でもあるのです。
新たなはじまりの場所・フィニステレの景色
そんな「世界の終わり」のフィニステレ。巡礼者がその巡礼の終わりに眺めるのが、崖からの壮大な夕陽。
1000年続くカミーノの歴史の中で、幾万の巡礼者がフィニステレで同じ夕陽を眺めてきました。
悠久のときを感じる夕陽はまさに圧巻。遠く続く水平線に太陽がゆっくり沈んでいきます。
フィニステレの夕日を眺めるたくさんの巡礼者たち。巡礼を歩ききった者同士だからこそ通じる独特の空気がそこにはありました。
騒ぐ人もなく、みな自分の旅の終わりと最後の夕陽をじっくり楽しんでいるようでした。
人生を見つめ直す
フィニステレは巡礼の旅の終着地点。一人一人の巡礼者が旅を終えてそれぞれの人生に戻るための心の準備をする場所。
長い道のりを歩いてきたからこそ、フィニステレが「世界の終わり」として特別に感じられるのです。
筆者が巡礼仲間とフィニステレに滞在したときも、ビールを飲みながら、この町を出てそれぞれの生まれ故郷に帰ったらどうするか、どう生きていきたいかを夜な夜な語り合いました。
「世界の終わり」であり「新しいはじまりの場所」でもあるフィニステレ。
巡礼の終わりにぜひ立ち寄って、旅をふりかえりつつ、自分の人生を見つめ直す素敵な夜を過ごしてみてください。
¡ Buen Camino !
以上、スペインよりカイでした。
カイリカコ
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