エチオピアで嗅いできました
こんにちは!旅する理科教師ぞーしきです。
突然ですが、この世は謎で満ちていると思いませんか?以前ご紹介した「象の糞コーヒー」然り、世の中は謎で溢れています。今回僕は「ジャコウネコの肛門から取れる分泌物が香水(シャネルの5番など)の原材料になる」という事実を嗅ぎつけました。香水だけに。この分泌物の名前はシベット(日本語では「霊猫香」)と呼ばれ、香料として使用されます。
"CHANEL No5 parfum" by arz – The photo was taken in Vilnius, Lithuania. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.
果たして、そんなお尻から出たものが人々を魅惑するほどの香りを放つのでしょうか?確かめてきたので報告します。
どの街にあるのか分からない
昔は世界数か所でジャコウネコからシベットを生産していました。しかし、その採取方法が肛門からシベットをかき出すという手荒な方法だったので、動物愛護の観点から現在はエチオピアでしか生産されていません。しかし、情報が乏しくどの街で生産されているのかわかりませんでした。
そこで、ジンマという街にとりあえず向かうことにしました。なぜなら、ジンマはコーヒーで有名であり、ジャコウネコはコピルアクというコーヒー豆を作る動物でもある為です。場所はここ。
首都アディスアベバからバスで8時間程かかります。
街の様子はコーヒーの名産地だけあって、大きなホテルが立ち並ぶちょっとした観光地でした。
街で聞き込みするも…
とりあえず街の人にジャコウネコの写真を持って聞き込みました。しかし…
そんな時、エチオピアの学校に訪問した際、知り合った化学の先生がシベットを生産しているジンマ大学の教授を紹介してくれることになりました。これはラッキー!(学校訪問の記事はこちらから)。
ジャコウネコ小屋へ
電話でアポイントを取り、車で迎えに来てくれたタッデセン教授。彼はエチオピアで一番のジャコウネコ研究者だと言います。
車で連れて行ってくれたのは大学内にあるジャコウネコ舎。移動したばかりで設備が不完全でした。
それでも中に入ると、ジャコウネコのゲージが10程並んでいました。
80㎝×80㎝×150㎝程の小さなゲージに1匹ずつ収容されていました。
残念ながら、ジャコウネコの写真がうまく撮れていませんでした。インドネシアで撮影したものを載せます。大きさは思ったよりも大きかったです。1m程だと言います。性格は凶暴で餌をあげようとすると飼育員の指を噛むこともあるようです。
ちなみに、ジャコウネコのストレスを解放するための運動場も敷地内に用意されていました。
こちらがジャコウネコのエサ。牛肉です。彼らの凶暴性が伺えた気がしました。
飼育員は2人。彼らがジャコウネコの肛門からシベットを取りだすと言います。シベットは性器と肛門の中間に溜まっており、傷つけない為に牛の角から作られたスプーンを使うようです。採取頻度は週1回のようで、今回は残念ながら日程が合いませんでした。しかし……
ついに、シベットとご対面
教授が特別に保管しているというシベットを見せてくれました。ビニールで何重にも包んでいました。こうすることで香りが6~7年保管できるのだとか。
そして中から、銀色のカップが。実はこの辺りから部屋に香りが充満していたのですが、後程感想を言います。
…どうですか。このザ・うんこ色。というか、ザ・うんこ。これが高価で取引されるというのだから、世界は謎に満ちています。
教授のご厚意で少しだけ分けていただきました。ありがとうございます。
いざ、検証!
では、この頂いたシベットを嗅いでみたいと思います。ビニールの上からでも十分な香りを発しています。
クンクン。これは…やはり、シャネル5番の原材料の名に恥じぬ芳醇な香りが鼻に抜ける…
訳がありません!臭いです。しかし、それは糞の臭いというよりも、とても強い加齢臭のような臭いでした。
「クレオパトラが体に塗っていた」
wikipediaには「エタノールに溶解させて、薄めると心地よい香りとなる。また、香水の香りを長持ちさせる保留効果や花の香りをより花らしくさせる効果がある。」と記載されています。つまり、シベットを薄めて他の香料とともに使用することで初めて香水としての役割が出てくるという事です。今回は加工せずにそのまま臭いを嗅いだのでこのような結果になりました。帰国したら、エタノールに溶解させて薄めてみたいと思います。
ちなみにwikipediaには「古代においては媚薬として用いられており、クレオパトラが体に塗っていたと伝えられている。」とも記載されています。うーん、猫の肛門から媚薬とは……ますます謎は深まるばかりです。
文・写真:ぞーしき
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