ちょっといい感じのレストランで提供されるピンクの塩といえばたいていヒマラヤ岩塩ですが、それは採掘段階から本当にピンクなのか?もしそうであるならば、採掘現場は、ピンク一色でめっちゃ綺麗ではないのか?確かめてきました。
こんにちは!旅する理科教師ぞーしきです。
以前、ネパールに滞在していた時にある衝撃の事実を知りました。ネパールのお土産として多く購入されるものにヒマラヤ産の岩塩があります。しかし、実はその多くがネパール産ではなく、パキスタン産なのだということです。従って、今回はその事実の検証もかねて、採掘場があるパキスタンのケウラ岩塩鉱山に行ってきました。
ケウラ岩塩鉱山はここ。この岩塩鉱山の埋蔵量は世界第2位と言われています。
そもそも岩塩ってなに?
では、そもそもの話から始めましょう。岩塩とはよく耳にする言葉ではあると思いますが、イメージしにくくはありませんか?岩塩とは、名前の通り「塩」の「岩」です。主な採掘場は、海辺ではなく、山の中になります。では、なぜ、山の中に塩の岩があるのでしょうか?
海がなんらかの理由でせき止められて、海水湖ができます(上図1、2)。水分が暑さにより蒸発し、溶けきれなくなった塩分が沈殿し、堆積します。これがいわゆる岩塩です(3)。その後、土地の隆起などが繰り返し起こると、山の中に岩塩が取り残された形になり、採掘場となります(4)。
行き方
僕は、ラホールという町から3時間程かけてバスで行きましたが、首都イスラマバードからもバスで3時間ほど。パキスタンのバスは派手にペイントされているのが特徴です。僕が乗ったこのバスはまだ序の口です。
宿探しが難航
僕がケウラについたのは日が落ちてから。地元民の観光地であると聞いていたので勝手に大きな町を想像していたのが失敗でした。実際は、写真の通り街というには事足りない、明かりが点々とするしがない村のようなところでした。
こうなると宿が問題です。バスで隣に座っていたパキスタン人に手伝ってもらい、町にある2件の宿に当たってみましたがラマダーン中とのことで断られてしまいました。
そこで、仕方なくオートリキシャ(バイクに客席を付けたもの)で15分ほどかけて隣町まで行き、何とかその日の寝床を確保しました。バジャホテルという名前で、一泊500ルピー(500円)でした。
岩塩鉱山へ向かう途中で…..
翌日、さっそく岩塩鉱山に向かいました。昨日ホテルまで乗せてくれた、ラッスンが今日も1日案内してくれます。彼はこう見えても37歳で、6人の子がいました。英語がある程度できたので意思疎通には困りませんでした。
彼は、熱心なイスラム教信者で途中ガス欠のバイクを見つけると、「神が私に助けるように示し合わせた」と近くのガソリンスタンドまで引っ張っていきました。神の御心のままにという意味の「インシャラー」を生で聞けたのがちょっとした自慢です。
ちなみに、パキスタンはイスラム国家でwikipediaによると97%がイスラム教徒です。
鉱山に近づいてくると、何やら線路沿いに石のブロックが積み重ねられているのが見えました。
もしやと思い、近づいてみると……案の定、手の平を超えるほどの大きな岩塩でした。
それが、辺り一面、奥まで砦のように積み重ねられています。ここは採掘された岩塩をストックする場所のようで、ここから外へトラックなり列車で輸送するようです。
ラッスンが石の色の違いを説明してくれました。上から、ピンクがかったもの、白く透明なもの、赤茶色のものと大きく3種類に分かれていました。一般的に鉄分の含有量によって色の違いが分かれるようです。
岩塩鉱山に到着
ストック場を後にし、5分ほどで鉱山入り口に到着しました。「ENTRY TICKET」の文字が見えます。
料金は外国人が10ドルです。10ドルと書いてある割にパキスタンルピーでないと受け付けられないと言われました。あまり外国人観光客が来ないと聞いていたので、外国人価格が設定されていることに驚きました。しかも高い……。
観光用のトロッコ(これに乗りながら、洞窟内を探索できる場合もあるようです)を横目にして、
いざ、洞窟内へ!
入り口には「well come to Khewra Salt Mines」の文字が見えます。
中に入ると、採掘用のトロッコのレールが奥まで続いているのがわかります。ひんやりとした空気が体を纏います。温度は20度前後と言ったところでしょうか?じめじめと湿度も高いので、電灯だけではホラー要素さえ感じました。
少し歩くと両側が岩塩むき出しになります。恐らくこの写真の白い部分は、雨水によって溶かされ、再結晶したものだと思われます。
いてもたってもいられなくなり、早速確かめてみました。うむ、ちゃんとしょっぱさを感じました。
本来はこのような層状に分かれた岩塩が、洞窟の壁と天井に見られます。これ、全部塩なんですよ?信じられますか?
さらに数分歩くと、ちょっとした休憩所が現れます。通常、ここでコーヒーなども注文できるようですが、この日はあいにくお休みでした。
さらに奥、生物の体内のような世界へ…
ライトアップの絶妙な加減が、妖艶な美しさを醸し出しています。
このあたりから、雨水によるものなのか下に水たまりが見えます。そして、その四方を囲む岩塩の白とピンクと茶褐色のコントラストが何とも言えぬ美しさを魅せています。
僕は、何か生物の体内に迷い込んだかのような印象を受けました。
塩のつらら
また、洞窟内の至るところにこのような塩でできたつららも見えました。原理は以前、鍾乳洞で説明した原理と同じでしょう。浸透してきた雨水によって、一度溶かされた塩が滴り落ちる途中で再結晶化して固まったのだと推測できます。
従って、床には石筍と同じような塩のタケノコが見えました。これは、その中でも特に大きいもの。
塩のモスクへ到着
さて、この洞窟の観光用ルートの最終地点には塩でできたモスクがありました。
これは、塩のブロックを積み重ねて作ったものであり、白や褐色などの塩の種類による光の透過性の違いによって、実に暖かな光の輝きを演出させています。
塩の加工品の販売
入り口に戻ると、岩塩の輸送用のトロッコがお見送りしてくれました。古いものを未だに使用していました。
そして、チケット売り場の近くでは、このように塩を加工したものが売られていました。
これはランプになっており、先ほどのモスクのような温かい光を得られます。
ガイドを付けていこう
今回、僕はひとりでケウラまで来ましたが、大都市でガイドを雇って一緒に来るのが一般的なようです。ガイドが一緒だと、一般人が閲覧禁止の塩の結晶でキラキラ輝く場所にも行けたようで少し後悔しています。
しかも、パキスタンの田舎に外国人が一人で行くことは危険を伴うようで、一人で来た外国人は初めてだと言われました。しかし、ここに来る甲斐は言うまでもなくあります。これから、ケウラに足を運ぶ人はガイドを雇って安心して、地球の神秘に触れてください。
文・写真:ぞーしき
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