前編はこちら
ーー世界一周はアイデンティティーになりえると。
世界一周すげーって思ったんですよね。絶対アイデンティティーになるって。
ーー東大の友達は世界一周について何て言ってた?
何て言ってたかなぁ……あまり覚えてないなぁ……「自由だね」って言われた気がします。少なくとも「すごいね」とか期待していた反応が得られた記憶はないですね。
ーー東大生ってさ、どんなタイプの人が多い?
うーん……知識欲が強い人が多いですね。「トップを目指す」というより、興味のあることをつきつめて勉強してきたらいつの間にか東大に入っていたというイメージですかね。だから既にある程度出来上がっていて、自分探しなんかをしてる人はあまりいないんじゃないですか。
ーーそれで、周りからいい反応は得られなくて、なにくそって感じ?
いや、行くって決めてからは周りは気にならなかったですね。自分で盛り上がっちゃって……休学して、もらっていた内定も蹴って、勢いで出発の2週間前にフィリピンへのチケットを取ったんです。
ーー世界一周に出たのが2012年の4月。旅で一番印象深かったことは?
「世界一周してる人ってこんなにいるんだ」ってことですね。
ーーそこ!?
タイとかにたくさんいるじゃないですか。これはブランドにならんなって。これは完走しなくてもいいかなって思いました。
ーーでも旅は続けた訳だよね。
まだ、序盤で旅が楽しい時期だったんですよね。でも、ギリシャで両親が結婚式を上げた教会に行って、旅を続けるモチベーションがなくなっていた時に、恩師が亡くなったんです。
「危ない」という連絡がきて、でも僕はその時イタリアにいて。何て言うか……距離というものを思い知らされました。その時、浮かんできたのが家族の顔で「自分が楽しんでいるだけじゃいけない」と強く思いました。
ーーそれで帰ることにしたと。
実はもうひとつ、彼女にフラれまして。エジプトのダハブで彼女が出来て、日本で待っていてくれているハズだったんですけど……。彼女が帰国した空港に元カレが来ていて、さよならです。なんか、やることなすここと全てうまくいかなくて、イタリアから日本への航空券を調べてみたらこれがまた激安で……。帰ることにしました。
ーー帰国して一年半、今就活してるんだっけ?
かなり苦戦してますよ。あの時(世界一周に出る前に)、簡単に内定が出たので完全になめてました。あの時内定もらったことで、僕の人生かなり狂った感じはあります。
ーー世界一周を再開する気はないの?
うーん……。次行くとしたら、新婚旅行で行きたいですね。
ーー今はもう、そういう違った意味付けがないと、行く意味がないと思ってるんだ。
そうですね。「リタイアしたんでしょ」って言われるのはすごく悔しいですけど、世界一周がそんなにすごいことじゃないというのが分かったし……。僕、目的がないと駄目なんです。
ーー最後に聞くけど、旅で自分は変わったと思う?
うーんどうでしょうか。あ、でも僕今、悩んでいることがあって。その人の幸せを思ってやろうとしていることを、その人が反対したらどうすればいいんですかね?
インタビュー前にデスクが「こんな話が聞けたらいいなぁ」と思っていたことを、どきゅんはそのまま語ってくれました。激しい競争にずっと身を置いてきた人間がなぜ旅に行きついたのか。その過程にはくっきり一本の筋が見えたと思います。「僕なんか……」と謙遜しきりでしたが、ぶっちゃけて語ってくれたどきゅんに感謝です。
ちなみに、僕はどきゅんの最後の質問に答えることができませんでした……。
不器用な東大生の旅はこれからも続いていきます。
取材協力:どきゅん東大生
文:デスク
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