自然界のものとは思えないカラフルな景観から「ナメック星」と呼ばれるエチオピアのダロ-ル火山。その秘密を理科教師が解き明かします。
こんにちは!旅する理科教師ぞーしきです。
前回の「アフリカのウユニ」ことアサレ塩湖に行ってきたに引き続き、エチオピアのダナキル砂漠のツアーについて書いていきます。ツアーニ日目は、とうとう「ナメック星」と言われるダロ-ル火山に向かいます。前回も記述しましたがここはかねてからとても行きたかった場所になります。そして、理科教師としてこの特異な自然現象の謎に迫りました。
ダロール火山とは?
ダロル火山はエチオピアのエトラエール山脈の北東、アファール州ダナキル砂漠に位置する火山である。1926年に起きた水蒸気噴火によりダロル火山が形成された。火口は海抜マイナス45mほどで、世界で最も低い噴火口として知られる。「ダロル」はアファル人の言葉で溶解や崩壊を意味し、緑色の強酸性(pH1未満)の池、酸化鉄、硫黄、塩で構成された砂漠の平原の風景が記述されている。wikipediaより引用
小一時間ほどでダロール火山に到着です。しかし、噂の鮮やかな色が見えません。
ここから10分程、トレッキングします。あの鮮やかな色程ではないですが、遠くには薄らと茶色と黄色が見えていました。
すると、ソルトマッシュルームと言われる塩でできたキノコのような奇岩が現れます。こちらのサイトによるとダロール火山が活動しなくなった場所で乾燥により形成されたようです。確かに真上から見ると、キノコの笠の淵に沿って薄ら黄色い円形のラインが見えたので、以前に火山から噴気した硫黄だと思われます。「悪魔のテーブル」とも呼ばれているようで、上がテーブルのように真っ平になる理由、その成因がとても気になりました。
大きさは、腰かけられるイスぐらいあります。この写真の段差になっているのはすべてソルトマッシュルームです。このあたりの30メートル四方のエリアに50個程が無作為に配置されていました。
ソルトマッシュルームのエリアから、歩くこと数分、写真で見たあの鮮やかな黄色が見の前に広がってきました。
とうとう念願の、ナメック星に到着です。僕は辺り一面彩られているとイメージしていたので、それよりはずっと小さかったです。しかし、カラフルさは僕の想像を軽く凌駕してくれました。心配していたガスの量は、確かに近づくと硫黄の臭いが鼻につきましたが、それほど多くはなく、マスクをしている人は1人もいませんでした。
もちろん、昨日同様、少し離れた岩の上から、銃を持った護衛兵が辺りを見守ってくれています。
「あぁ、綺麗だなー。来てよかった」だけで、僕は終わりたくないと思っています。それを生徒たちに伝えたいのです。伝えるためには、詳細な観察が必要です。従って、人々を魅了するその原因を探ってみました。
まず、今回観察出来た彩られたエリアは大きく2か所になります。それぞれ50m四方程度の大きさでその間は約100m離れていました。僕が見たところ大きな違いは噴出する液体の量にあったので、噴出する液体が多い方を液体エリア、少ない方を気体エリアと名付けました。
液体エリアが僕らを魅了する原因はなんといっても鮮やかなその色にあります。白・緑・黄色・濃い黄色・茶色・こげ茶と普段自然界では見かけることのない色たちが、荒野をバックにして僕らの目を刺激してきます。特に緑はこの液体エリアで顕著に際立って見えました。
この液体はどこから湧出しているのかというと、辺り一面には1cm~10cm程度の穴が100か所以上開いていて、そのうち数十か所から噴出しています。
気体を噴出しているものや、何も噴出していないものはこのように尖った形をしていました。穴を覗くと、針のように尖った硫黄の結晶で満たされていました。
一方、液体を噴出している穴は、液体によって浸食されるせいか、比較的尖りの高さが低いように感じました。この液体は地下のマグマが地下水を蒸発させ、様々な成分を取り込み凝結したものだと考えられます。この液体に触れてみましたが、ぬるい程度の温度で想像していた地獄のような熱さではありませんでした。もしかしたら、噴出孔から遠い所の液体を触ったせいかもしれません。
液体エリアではこの液体を出す穴が多く、至る所からゴボゴボと音を立てて、液体が湧いていました。その一方で写真のように尖った部分も多く、気体が噴出してるのもありました。気体が噴出していない尖りは、過去に噴出していたものだろうと推測しました。
噴出孔の穴に近い順に白→黄→茶色になっていて、液体の部分にだけ緑が見えるように感じました。予め、ガイドから白は「塩」の色で黄色は「硫黄」の色だと聞いていました。調べてみると、塩の凝固点(液体から固体になる温度)は約800度、硫黄は約100度とのこと。穴付近で塩が先に結晶化して「白」をつくり、その周りで硫黄が「黄色」をつくっているようです。「茶色」は岩石から溶かされてできた、鉄化合物によってもたらされるようでした。
緑はこちらのサイトによると、液体に生息するシアノバクテリア(藍色細菌)と硫黄細菌の働きによるものであるようです。このシアノバクテリアは最古の光合成生物と言われています。だから、このような劣悪な環境下でも住めるのでしょう。アリなどの昆虫が写真の通り、水面にいくつも死骸となって浮かんでいるのは印象的でした。
気体エリアは液体がほとんど見当たらなく、噴気孔からふつふつと蒸気が上がって、視界を悪くしていました。
こちらは、どこまでも黄色が噴気孔の突起とともに広がるのが印象的でした。
地面を拡大するとこんな感じ。気体エリアは液体によって浸食されないせいか、硫黄や塩の結晶が比較的きれいに見えました。
硫黄も温度によって、結晶の仕方が異なります。自然が作る芸術はいつも私たちの想像を破壊してくれます。
これは、塩の結晶に硫黄が付着して鮮やかな黄色を演出しているのだと思います。
結晶によるアートと鮮やかな色達で奏でる自然のパレードは、僕を終始魅了させて止まなかったです。「異世界」という言葉はここにふさわしいと素直に思いました。
また、こちらのサイトによると、夜には僕が以前インドネシアで見たイジェン火山(参考:青い炎の火山!?常識をくつがえす絶景・イジェン火山に行ってきた)のような青い炎が見えると言います。イジェン火山と比べるとだいぶ硫黄の量が少ないので、疑わしいですが、是非とも確認したかったです。このツアーに含まれていないのが残念でした。
ナメック星に2時間程滞在した後、ソルトマウンテンと言われる塩の奇岩群が並ぶエリアに行きました。
ここでも神秘に出会いました。人ひとりがやっと通れるぐらいの通路や洞窟をくぐって到着したのは、エメラルドが美しい池です。この色はシアノバクテリアでなく、溶け込んでいる微粒子と太陽光の反射によるものだと思います。
そして、最後に温泉を見学しました。この色を見てください、何とも毒々しいですね。
ガイドが説明してくれました。この温泉は切り傷に塗ると3日後には癒えるそうですが、飲むと死に至るようです。
この鳥は誤ってこの水を飲んだのでしょうか?この温泉の横で息絶えていました。
このダナキル砂漠を含む一帯はアファール低地と言って、地球を覆う殻であるプレートを生成する場所となっています。普通はそれが海底にあるのですが、ここでは世界的に珍しく、地上に表れています。その為、かつては巨大なマグマの塊がこの地に吹き出し、ラクダやヤギなどの家畜を飲みこんだといいます。そのマグマが固まると、周りよりも重くなって、地盤沈下した結果海抜-116mまでに達する低地になりました。そこに、紅海からの海水が流れ込み、塩湖化して、現在のように岩塩に覆われました。それ故、塩と火山による硫黄などの成分によって、このような奇特な景観が生まれています。(一部ナショナル ジオグラフィック日本版 2012年 01月号参照)
僕は、ダロール火山のナメック星を旅の一大イベントにしていました。そして、今回見学してみてその規模の小ささには正直落胆しましたが、ネットなどのメディアでは感じられない、上記したような新しい発見が多々ありました。やはり、観察して自分独自の発見をすることで、伝え方にも幅が出ますし、何より自分の中で特別感を持つことで、思い出として印象的に記憶化されます。
正直、ダロール火山の情報はネットで溢れていますが、その答え合わせのツアーにしないためにも、有名な観光地は独自の発見をするように心がけるべきだと思いました。
文・写真:ぞーしき
世界新聞の最新情報をゲット
RANKING