メキシコのちょっと変わった国際テロ組織「サパティスタ」の拠点を見学してきた

2016.11.20 07:00 
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公安調査庁に国際テロ組織と認定されている、サパティスタ民族解放軍(EZLN)。メキシコ・チアパス州のアートな拠点・オベンティックに行ってきました。

 

国際テロ組織とされる「サパティスタ民族解放軍(EZLN)」を訪ねてみた

お酒と音楽、そしておねーさんやアートを愛するナシオです。

EZLN(サパティスタ民族解放軍)と言うゲリラ組織を皆さんはご存知でしょうか? 日本の公安調査庁からも「国際テロ組織」と指定されているメキシコのゲリラ組織です。

メキシコのチアパス州には「EZLN(サパティスタ民族解放軍)」のアートに溢れた拠点「オベンティック」があると聞き、実際に行ってきました。

そこで見た数々の壁画や拠点内部の様子を紹介したいと思います。

 

サパティスタ民族解放軍(EZLN)ってなに?

EZLN(サパティスタ民族解放軍)は、メキシコのチアパス州を中心として活動しており、貧しい先住民族や農民の生活水準の向上など共に女性への差別の解消を求め1983年に設立された組織です。

 

サパティスタ民族解放軍(Ejército Zapatista de Liberación Nacional、EZLN)は、メキシコで最も貧しい州とされるチアパス州を中心に活動するゲリラ組織。サパティスタはウェブサイトを介して世界的な支援を受けている。参照:Wikipedia「サパティスタ民族解放軍

 

指導者とされているマルコス副司令官の姿。
DCIM100GOPROG0840934.

 

国際テロ組織としては異質なサパティスタ民族解放軍(EZLN)

Wikipediaには、こうも書かれていました。

・サパティスタ民族解放軍がインターネットを介して世界的な支援を獲得
武力などの実力を行使せず隠然たる影響力をメキシコ政府に対して持つに至ったというIT時代の革命運動。
・武力や脅迫といった一般人の犠牲者を生むテロリズムに頼る前例とは異なった革新的手法。

 

また、日本の公安調査庁のホームページには…

EZLNは2012年現在,テロ活動を行うことなく,インターネット上で先住民の権利擁護活動などを展開している。

 

…とありました。

最初は何やら危なそうな感じも受けましたが、こうして調べていくうちに、穏健な活動状況で観光客も比較的気軽に見学できる事と、何よりアートが素晴らしいとのことなので、サパティスタの拠点の1つ「オベンティック」へ足を運ぶことにしました。

 

サパティスタの基地「オベンティック」までの道のり

最寄りの観光都市、サン・クリストバル・デ・ラス・カサスの乗り合いタクシーやコレクティーボ(ミニバス)の集まるエリアから(下の地図のポイント)乗り合いタクシーに乗って1時間半弱でオベンティックに到着しました(43ペソ)。コレクティーボの場合、お客さんが集まるまで発車しないので、時間の無い方には乗り合いタクシーがお勧めです。

 

(サン・クリストバル・デ・ラス・カサスのタクシー乗り場の地図)

 

満員のタクシーはカーブの多い山道を通り抜けて行きます。DCIM100GOPROG0020699.

 

右へ左へと身体を揺らす事1時間半弱の後、サパティスタの基地「オベンティック」の入り口に到着しました。DCIM100GOPROG0050708.

想像と違って、軍服やライフルを持ったゲリラの姿もなく、平穏な雰囲気です。

 

一筋縄ではいかないサパティスタ潜入

早速、サパティスタの基地を見学したい事を伝える為、守衛所に居た目出し帽を被った女性のサパティスタ2人の元へ行きます。見学したい旨を伝えると…
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サパティスタの女性:そこで待ってて。

…と、言葉数の少ない返答が返ってきました。

 

入り口の隣の売店あたりで、言われた通り待つ事にしました。
IMGP8073

早速オベンティックの名物の壁画に遭遇して、早く中に入りたい気持ちで心は一杯です。

 

5分ほど待つと、目出し帽のとバンダナで口元を隠したサパティスタの男が2人やってきて幾つかの質問に答えるように言われました。

サパティスタの男2人:国籍は? 職業は? 訪問目的は? EZLNに寄付をするつもりか?

 

これらの質問に答えると、彼らは専用の用紙に鉛筆でゆっくりと書き込んでいきます。訪問目的は「壁画を見る事!」と声を大にして伝えました(笑)

全ての質問が終わり、二人のサパティスタは用紙を持ってどこかへ行きました。この時点で見学を断られる事は無かったので、用紙に記入された質問事項を上司が確認でもしたらすぐ入れるものだと思っていました。

…けれども、すぐには見学許可は下りませんでした。

 

とにかくサパティストの2人をひたすら待つ…

目の前の何もない田舎道を眺めたり…
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ゲートの向かいにあるサパティスタの売店の絵に目をやったり…
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サパティスタの見学許可を待つこと1時間。質問用紙を持って消えた2人が戻って来て一言。

 

OKだ。こっちへ来い。


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うおぉぉぉ!やっと見学できる!と、エサを用意された犬のごとく 2人の元へ走って行きました(笑)

 

怪しげな女性がつきっきりでサパティスタを案内

入り口にあった大きなゲートではなく、脇にあった小さな柵の扉から入るように言われ、いよいよサパティスタのオベンティック見学スタートです!
DCIM100GOPROG0760910.

 

案内係と監視役を兼ねたサパティスタの女性が僕に付くことになりました。
DCIM100GOPROG0340783.

目出し帽と民族衣装の非日常的な組み合わせに、怖いような可愛いような不思議な気持ちになりました(笑)見学時に注意事項として伝えられていた事は以下のような事でした。

 

オベンティック内部で、顔を隠していない人間の写真撮影はしてはいけない。許可なく建物内に入らない事。

…などでしたが、建物の壁画を撮る事に関しては何も注意されませんでした。

 

アートの無い場所など無い…!サパティスタのオベンティック

Tシャツのデザインなどで見かけた事がある方もいると思われる、バンダナで口元を隠した女性の絵。
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こちらも女性を描いた壁画です。
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マスクをして銃を持っているのですが、手に花を持っている事で柔らかさを感じます。女性への差別解消を訴えるサパティスタならでは、と言ったところでしょうか。

 

ありとあらゆる建物に何かしらが描かれているサパティスタのオベンティックは、色の鮮やかさもあってか、どこを見ていても楽しい気持ちになります。
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武器を持った人が描かれた壁画を見ても恐怖を感じません。
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ここはゲリラの拠点?と疑うような牧歌的な壁画。
DCIM100GOPROG0360788.

 

踊るサパティスタたち(笑)
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メキシコで避けては通れないグアダルーペのマリアもサパティスタ風になっていました(笑)
DCIM100GOPROG0160743.

 

教育も担うサパティスタの壁画は深い…

国際テロ組織のゲリラの拠点と聞くと物々しいですが、サパティスタのオベンティック自体はのんびりとした田舎の集落といった印象を受けました。
DCIM100GOPROG0320777.

 

バナナの木や干された洗濯物を見るとメキシコの田舎の村と何ら変わりない気がします。IMGP8112

 

中には語学を教える場所もありました。
DCIM100GOPROG0570852.

貧困など様々な理由で、公的にスペイン語の教育を受けられない貧しい先住民族などへの授業が行われているようでした。

 

教室の内部も壁画が描かれているのはオベンティックならではでしょうか。
DCIM100GOPROG0560848.

こうして多数の壁画を見ていると、サパティスタはメキシコ壁画運動の手法を取り入れているのでは?と思いました。文字の読めない人々にもサパティスタの主義主張を伝える手段としての「壁画」なのでしょう。

 

公共の場に描かれた大壁画は多くの人が一斉にいつでも見ることができ教育効果が高い。また文字が読めない貧しい人々にも絵でなら革命の意義や民族意識などが伝えられる。参照:Wikipedia「メキシコ壁画運動

 

サパティスタの壁画は、ただのアートではないのかもしれませんね。

 

サパティスタのオベンティックで印象に残った言葉

サパティスタはオベンティックのような拠点の事を「Caracol(カタツムリ)」と呼んでいるのですが、カタツムリをあしらった壁画もいくつか存在していました。
DCIM100GOPROG0350785.

質問をしてもほぼ答えてくれない案内係の女性でしたが、僕が「なぜカタツムリが多く描かれているのか?」と聞いた時だけはしっかりと答えてくれました。

 

「LENTO PERO AVANZO.~ゆっくり、だけど前へ進む~」

 

前へ進むのがゆっくりなカタツムリに例えた彼らの革命に対する標語なのでしょうが、それを旅や人生に置き換えても通用すると感じた印象深い言葉でした。
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国際テロ組織のサパティスタを見学して

サパティスタの基地「オベンティック」では、見学許可が下りるまで時間がかかったりこちらの質問にほぼ答えてくれないなどの不便な事はありました。

けれども、そこに存在する壁画の数々は色鮮やかで目を引くものばかりですし、身の危険を感じる事は全く無く、一見の価値あるオベンティック内部では無いかと思います。

一般人が見学可能なゲリラ拠点……貴重なスポットなのではないでしょうか?

以上、旅の進み具合は遅いけれど前進はしている?ナシオがお伝えしました!

 


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ナシオ
1976年生まれのアラフォーバックパッカー。様々な職を経たのち深夜特急の世界に憧れ30歳から旅を始め、二度の長旅で20数か国を訪れた。40歳を目の前にし一時は落ち着く事も考えたが、現在は5年ぶりに海外に出て中南米旅のまっ最中。▶Blog ▶Facebook ▶Instagram  

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